では、公的年金はどんな不幸に備える保険なのでしょうか。
それは「予想外に長生きすること」です。
長生きすることは、本来幸せなことです。しかし、加齢によって体が弱り、働けなくなれば収入は途絶えます。それに備えて十分なお金を貯えられればいいのですが、いつまで生きるかわからないため、「いくら備えれば安心か」という答えが出ません。
そこで、いつまでも長生きしてもいいように、終身で所得保障をしてくれるのが公的年金なのです。「保険」という役割を考えれば、「損だ」「得だ」と騒ぐのはナンセンス。
たとえば、がん保険は、がんにならなければ保険金はもらえません。しかし、「がんにならなくて損した」「保険料が無駄になった」とは誰も思わないはずです。なぜなら、保険金はもらえなくても、万が一に備える安心感を買ったと納得しているからです。
3つの保障がついている
公的年金が提供する安心のメインは「長生きリスク」をカバーする所得保障です。これは「老齢年金」と呼ばれ、原則として65歳から死ぬまで受け取ることができます。
そのほかにも公的年金には「障害年金」「遺族年金」という2つの保障がついています。
障害年金は、65歳になる前に病気やケガで障害状態になると受け取れます。民間の保険でいえば傷害保険に似ていますね。
遺族年金は、一家の大黒柱が亡くなったとき、残された配偶者や子どもなどに支給されます。これは民間の生命保険のような役割です。
「高額の生命保険は不要」と断言できるワケ
死ぬまでの所得保障のほかに、「障害」や「死亡」まで一度にカバーしてくれる保険は民間保険会社にはありません。
障害年金は、それほど使わないのではないかと思うかもしれません。しかし、会社員が加入する厚生年金は、軽度の障害でも手当が支給されます。しかも、障害の原因となった病気やケガの種類は問われません。視覚、聴覚、手足といった外部障害にかぎらず、がん、糖尿病、心疾患などの内部障害やうつ病、認知症などの精神障害も対象です。