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額が大幅に減るだけではなく、受給開始したらiDeCoも続けられない…「早死にしたら損するから早めにもらいたい」という年金の"勘違い"

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genre : ライフ, 経済, ライフスタイル, 社会

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そして、いったん年金受給者になってしまうと、iDeCoも続けられませんので、じぶん年金を増やす道も狭まります。

よく「少ない年金でも長くもらえば得なんじゃないの?」という人がいますが、これも間違いです。

繰り上げ受給は、生きる年数が長くなればなるほど損になるのです。

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図表3をご覧ください。これは、年金を各年齢から受け取り始めた場合の総額を比較したものです。60歳からもらい始めた人は、81歳のときに65歳からもらい始めた人に追い越されます。その後は長生きするほど受け取り総額の差が開く一方です。

年金は早くもらい始めても得しないどころか、デメリットが多すぎることがおわかりいただけたでしょうか。もちろん、72歳ぐらいで亡くなってしまった場合は、「早くもらっておいてよかった」となるかもしれません。

72歳というのは、男性の健康寿命とほぼ同じ年齢です。男性の死亡数最多年齢が88歳ですから、その後15年ほど生きる人が多いのです。女性ならば、さらに健康寿命から死亡数最多年齢までの期間が長くなります。年金が真に必要な時期というのは、この健康寿命が尽きて働けなくなってからの期間です。

年金は「長生きリスクに備える保険」なのですから、「長生きしたときにもらおう」という考え方を前提にしたほうがうまく活用できます。

なぜなら、年金は遅くもらうほど増えるしくみがあるからです。

ノーリスクで年利8.4%の金融商品

年金を増やすもっとも簡単な方法は、受給開始年齢を繰り下げることです。

公的年金は、66歳以降にもらい始めると1カ月あたり0.7%増額します。1年繰り下げれば8.4%も受け取り額を増やすことができます。

日本は長い間、超低金利時代が続いています。そこで投資ブームが起こっているわけですが、投資は必ず儲かるというものではありません。株や投資信託などは、つねに値下がりや元本割れリスクがあります。

ところが、公的年金は、ノーリスクで年利8.4%の運用ができるのです。これほど安全にお金が増やせる金融商品はほかにないでしょう。