ウクライナ侵攻を続けるロシアは、2024年3月17日の大統領選に向けて「政治の季節」に入った。政権担当二十三年になるプーチン大統領は出馬の構えで、当選すれば、2030年まで6年の続投が可能。スターリンを抜いて、20世紀以降のロシアで最長在位の指導者となる。

 一方で、6月に起きた民間軍事会社「ワグネル」の反乱は、プーチン体制下で初の武装蜂起であり、政権の動揺を示した。創設者のプリゴジン氏らワグネル幹部三人が8月23日、小型ジェット機の墜落で即死した事故は、政権による粛清劇とみられる。選挙を前に、不測の事態につながる「ワイルドカード」が一掃されたことで、政権基盤は強化されたが、新たなサプライズが起きる可能性もないとはいえない。

 

目指すは大統領選の「記録的勝利」

 プーチン氏にとって、続投は最重要課題だろう。大統領は軍最高司令官であり、退陣すれば、戦争指導ができなくなる。国際刑事裁判所(ICC)からウクライナの児童連れ去りで逮捕状を発行されており、辞めれば、国際法廷で戦争犯罪を裁かれかねない。2020年、2期続投に道を開く憲法改正を行っており、「終身独裁」を狙っているのは明らかだ。

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 ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」(7月19日)は、クレムリン当局者の話として、プーチン氏が80%以上の得票率で圧勝する方向で、秋に愛国イベントを開催するなど準備を開始したと伝えた。政治戦略を担当するキリエンコ大統領府第一副長官がチーフで、行政や政府系企業を総動員して記録的勝利を達成する方針という。プーチン氏が過去4回の選挙で8割の票を得たことはなかった。

 ロシアの選挙は不正の多い「官製選挙」だが、政権側は盤石の体制を固めつつある。この夏、プリゴジン氏だけでなく、左右両派の反プーチン勢力が弾圧された。服役中の活動家、アレクセイ・ナワリヌイ氏に対して新たな裁判が実施され、19年の刑が言い渡されたほか、多くのリベラル派が拘束された。続投に反対していた極右の活動家、イーゴリ・ギルキン氏も逮捕された。