プーチン大統領(71歳)の大統領選対抗馬は、79歳の共産党委員長
クレムリンがコントロールする議会は8月、選挙監視団体の活動を大幅に規制する法律を制定した。従来の選挙では、民間選挙監視団体が不正や混乱の実態を動画で撮影して公表したが、今後は投票所や開票所の監視活動が制限される。最大の監視団体、ゴロスの幹部らも逮捕された。政権側は対立候補の人選も進めており、野党第一党の共産党に対しては、79歳のジュガーノフ委員長に出馬を要請した。これは、71歳になるプーチン氏の高齢問題が争点になるのを防ぐためで、対立候補は高齢者やアピール度の低い候補で固める意向という。
選挙までは、国民の反発を防ぐため、「安全運転」を進めそうだ。2022年9月の部分的動員令後、ロシア各地で反戦運動が発生しただけに、総動員令や戒厳令は避けるとみられる。年金や公務員給与の増額などバラマキ政策も進めそうだ。当選すれば、6年のフリーハンドを得て、民意を気にせず、戦争継続が可能になる。一方のウクライナは、長引く戦火で経済は疲弊し、国民の厭戦気分が高まりつつある。2024年11月の米大統領選で共和党候補が当選すれば、西側の結束は一気に弱まる。戦争長期化はロシアに有利とプーチン氏が考えているのは間違いない。
とはいえ、長期政権に伴うひずみや閉塞感も確実に高まっている。
プーチンが抱える“4つの不安要素”
第一に、プーチン大統領の健康問題がある。謎のブロガー「SVR(対外情報庁)将軍」は、「プーチンは重い病気を患っており、回復の見込みはない。代わりに、影武者が公務をこなしており、出番が増える一方だ」と繰り返しSNSに投稿している。真偽は不明だが、プーチン氏の動作には、かつてのマッチョぶりはみられない。
第二に、プーチン氏続投の場合、国際的孤立が長期化するとの不安がエリート層にある。ICCから逮捕状を出されたプーチン氏が外遊できる国は、旧ソ連諸国や中国程度で、大統領の任務である外交の遂行は困難だ。西側の経済制裁への経済界の不満も根強い。