9月8日から10日にかけてロシア国内で行われた統一地方選挙。結果は、ウラジーミル・プーチン大統領(70)の出身母体でもある与党「統一ロシア」の圧勝で幕を閉じた。
戦時中にもかかわらず、ロシア政府はなぜ統一地方選挙の実施に踏み切ったのか。拓殖大学特任教授の名越健郎氏が解説する。
「プリゴジンの乱で揺れた政権の基盤を盤石化させたいという狙いがあります。今回の選挙は来年3月に行われる大統領選の前哨戦。5期目を目指すプーチン大統領にとっては、まず統一地方選挙で与党が圧勝することで弾みをつけたいのです」
ロシアの選挙制度については日本ではあまり知られていない。そこで「週刊文春」が調査してみると、驚くべき実態が明らかになった。
まずは、選挙の象徴とも言える「投票箱」だ。モスクワ市の職員・ドミトリー氏(50)が語る。
「投票箱は無色透明で、投じた投票用紙が外から丸見えになっているのです。現行の投票用紙には候補者名が何人か書かれており、票を投じたい候補者にレ点を記しますが、書き込んだ位置も外からハッキリ見える。つまり、誰が誰に投票したか一目瞭然なのです。選挙管理員が投票箱の真横に座っていますし、心理的には野党候補者に入れづらい状況です。見られたくない人は用紙を折って入れていますが、投票口が非常に狭く、しっかりと折らないと入らないので、『何か隠したいことでもあるのか』と逆に怪しく思われてしまう(笑)」
それだけではない。
投票先が自動音声で流れ…
「2021年9月に行われた連邦議会選挙の際、スキャナーで票を自動的に読み取る投票箱が登場しました。画期的なシステムに皆驚いたのですが、いざ投票してみるとさらにビックリ。なんと、票を読み取った後に投票先が自動音声で流れる仕組みになっていた。投票箱の近くにいる人間は誰に投票したかわかってしまうのです」(同前)
近年、注目を集めているのがオンライン形式での投票だ。