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村田修一から岡本和真へ 「ふたりの背番号25」を繋ぐ物語

文春野球コラム ペナントレース2018

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村田修一が語った岡本の未来像

『週刊プレイボーイ』の取材陣の車に揺られながら、憂鬱だった。これまで無数の村田コラムを書いてきたがマンツーマンインタビューは初めて。そんなほぼ初対面の状況でNPB復帰への厳しい道のりだけじゃなく、「自分の背番号とポジジョンを奪われた形になった後輩の岡本のこと」を聞くという高難度ミッションだ。考えてみてほしい。会社で若手を育てたいとリストラされて、なおもその後輩のことをしつこく聞かれたら俺なら怒るか不機嫌になると思う。頭突きを食らってサヨウナラでも文句は言えない。車内で担当A編集マンと「独立リーグからの再出発みたいなイージーな形でまとめるようなことだけはやめましょう」と確認し合う。

 あ、本物の村田さんだ。なんて感動してる間もなく球場に着くと目の前の男に話を聞く。37歳の単身赴任生活、初めてのひとり暮らしだという。球場へ向かう途中に車内から見かけた大型スーパーで村田さんも晩ご飯の買い物してるのかなとか、あれだけ巨人の優勝にも貢献してなぜ自分だけこんな目に……なんてヤケクソになったりしないのだろうかとか思ったことをひとつずつ質問していく。そりゃあ人間なんだから怒りや悲しみもあるだろう。けど、我々に弱音を吐くこともなく、目の前の現状を受け入れ前を向く。もちろん古巣に対する愚痴も一切ない。話を聞きながら凄い男だなと感服してしまった。そして、この選手を応援し続けて良かったなと心から思った。
 
 気が付けば15分弱経過。自炊生活の新鮮さやゲッツー談義で場が和んでから、ついに意を決してその質問を投げかける。

栃木ゴールデンブレーブスで25番を背負う村田修一

「キッ、巨人では今年から岡本和真選手が村田さんの25番を継承して、オープン戦も絶好調でした。岡本選手に対して、後輩として、村田さんの後継者として意識したりはしたものなんですか?」

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 緊張で無意味に噛む俺、それを見て微かにニヤリと笑ったように見えた村田さんは、「僕も一緒に自主トレに行ったりしていろんな話をしましたけれども」と“巨人の背番号25”について語り出した。

「(岡本が)つけて頑張るというんだったら、全然つけてもらっても構いません。横浜の時も僕のあとに25番を筒香がつけてくれましたし。僕と比べられることも多々あると思いますが、そこはやっぱり選手としては乗り越えていかないといけないところだから。そういう意味では筒香もすごく頑張って、全日本で4番を張れるバッターになってくれました。和真もそういう素質を持っている選手だと思っているので、頑張ってほしいです」

 栃木の主砲から巨人の若きスラッガーへ。背番号25が繋ぐ物語はまだ終わらない。これから我々は東京ドームで「がんばれ、岡本」と幾度となく願うだろう。そして、同時にその背中の向こう側に、こうも想い続ける。

「がんばれ、村田修一」と。

 See you baseball freak……

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