12月9日に皇后雅子さまが還暦を迎えられた。心身の不調を抱えて、長い間、苦しい闘いを続けてこられた雅子さまを、平成の時代から見守り続けてきた宮内庁幹部が、その実情を月刊「文藝春秋」取材班に語った。

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インドネシア訪問を経て自信を得られた

 前日の雨が嘘のように晴れ渡った今年6月17日のインドネシア。日本とインドネシアの国旗をはためかせる黒塗りのベンツが、警察車両に先導されながらジャカルタの街を疾走している。後部座席に座る天皇陛下と皇后雅子さまは、窓の外に広がる景色を眺めて、穏やかな笑みを浮かべていた。

2023年6月、インドネシアを訪問された天皇皇后両陛下 Ⓒ時事通信社

 だが、心の中では、この先1週間の旅程を無事に果たせるか、一抹の不安がおありだったに違いない。適応障害で病気療養中の雅子さまが、国際親善のために外国を訪問されるのは、約21年ぶりのことだ。日本を立つ直前も緊張からか、笑顔に力がないご様子だったという。

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 皇室ジャーナリストが語る。

「出発前日に突然、宮内庁から、雅子さまの主治医である大野裕氏のインドネシア同行の取り消しが発表されたので、雅子さまも海外訪問に自信を深めていらっしゃるのだと思っていました。ただ一方で、同じ日に『ご負担軽減のため、お見送りの取材設定を中止する』という旨の発表もされたので、『やはり、まだ体調が万全ではなく、予断を許さない状況なのか』と、不安が頭を過ったのもたしかです」

 天皇陛下と雅子さまを乗せてジャカルタを走る車は、夕方に宿泊先の「ホテル・インドネシア・ケンピンスキー」に到着した。ジャカルタ市内の景観を眺望できる五つ星のホテルだ。正面には、巨大な円形の噴水が設置され、周囲に両陛下を一目見ようと大勢の人が集まり歓声を上げていた。

 今年12月9日に雅子さまは60歳の誕生日を迎えられる。皇后に即位されてから5年が経ち、コロナ禍も徐々に収まり、最近はお出ましの機会が増えている。とくに9月16日には「全国豊かな海づくり大会」ご臨席のために北海道を訪問され、10月7日には「特別国民体育大会」のために鹿児島を、15日には「国民文化祭」などのために石川県を訪問され、ここ数カ月の過密な日程をすべてこなされている。「インドネシア訪問を経て自信を得られた」と見る宮内庁関係者も多い。

天皇皇后両陛下はインドネシア現地で歓待を受けた Ⓒ時事通信社

予定の公務に9割以上ご参加

「石川県を訪問された際には、飛行機の機材トラブルで、急遽、予備機に乗り換え、小松空港に到着されたのも予定より1時間半遅れのことでした。式典の遅延も仕方のない状況でしたが、両陛下は金沢市内のホテルで昼食をとる予定を飛ばして、空港内で昼食を済ませ、わずか20分で着替えも終えられた。そして式典会場に直行することで、見事に遅れを挽回されたのです。これほどの臨機応変な対応は以前の雅子さまでは考えられないことで、感動を覚えました」(前出・皇室ジャーナリスト)

 かつての雅子さまは、体調不安を理由に、公務の“ドタキャン”や途中退出をする場面が、頻繁に見られた。だが、最近は予定された公務に9割以上の割合で、参加されているという。宮内庁担当記者が語る。

「最近は、当日の行事開始の1時間前や、極端な場合は数十分前になって、ようやく宮内庁から『両陛下のご参加になりました』と発表されることが多いです。聞くところによると、雅子さまご本人も自分の体調がどうなるのか、本当に直前まで分からない。前日から万全だと言えるのは、よほど稀なことなのです。それが適応障害の特徴なのだと、我々は理解するしかありません。ただ、逆に言えば、そうやってご自身の体調とうまく付き合い、慎重に見極められるようになった。公務の参加日程を増やせるほどに、ご回復されてきたということです」

 以前、本誌記者が秋篠宮家について取材をしていた時のこと。宮内庁幹部が「眞子さまと、佳子さまは結婚をして、皇室を出たいお気持ちがある」と語ったうえで、その背景として皇室の知られざる実情を明かしてくれた。