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トランプの「フェイク」騒動

 実はアメリカではそうした不安が現実になったような騒動も実際に起きている。しかも主役は2024年の米大統領選でも引き続き大注目の「元祖フェイクニュース」ドナルド・トランプその人である。

 8月31日、元FOXニュースのコメンテーターで著名なトランプ支持者でもあるジョン・ソロモンと共同ホストのアマンダ・ヘッドは、右翼ネットワーク「リアル・アメリカズ・ヴォイス」で前大統領トランプとの17分間に及ぶ「独占電話インタビュー」を行ったと宣伝した。

 ところが公開された音声はプツプツと途切れ続け、リスナーからは「語り口が強張っていた」「ウクライナという言葉の発音が異様だった」などという指摘が相次ぎ、電話インタビューに応じたのは、トランプの「フェイク」だったのでは、と大騒ぎになったのである。

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「リアル・アメリカズ・ヴォイス」は「電話の相手はトランプ前大統領に間違いない」と声明を出したが、疑念は一向に晴れず、他メディアでは媒体のオーナーであるロバート・シッグもトランプのインタビューが音声のディープフェイクである可能性を認めたとも報じられた。

 ところが、そのコメントが「シッグになりすました人物のものだった」(ニュースサイト「デイリー・ビースト」)と後に訂正され、情報は錯綜し、真相は藪の中、である。

話している相手は“本物”なのか?

 2024年の選挙イヤーで、トランプやプーチンが生成AIをどう活用するつもりなのかは現時点ではわからない。

 YouTubeやZoomなどのオンラインメディアをはじめ、テレビあるいはラジオで話している相手が本当に候補者その人なのか、それとも生成AIが作り出した「偽造人間」なのか。有権者としては、判別することは難しい時代に突入したということだけは知っておくべきだろう。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。