2024年は世界的な「選挙イヤー」だ。米国・ロシア・EU・インド・メキシコ・台湾などおよそ30の国と地域で国政選挙を控え、その結果は「2030年までの世界動向を決定づける」とまで言われている。

 注目すべきは、世界が「チャットGPT」などの大規模言語モデルに象徴される「生成AI時代」に突入して初めて迎えるメガ選挙サイクルである点だ。

※写真はイメージです ©AFLO

 

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 選挙を戦う政治家にとって生成AIのような新しいテクノロジーを上手く味方につけることは最重要課題の1つだ。かつてヒトラー陣営がラジオを駆使したように、“新参者”ケネディがニクソンにテレビの政治討論で優位に立ったように、トランプがソーシャルメディアのデータを活用して時代の寵児となったように。

選挙イヤーに生成AIが及ぼす変化

 では生成AIは、来る選挙イヤーにどのような変化を及ぼすのだろうか。

 まず生成AIを導入すれば多大な時間と人手を必要としていた個々の有権者のプロファイリング(居住区や収入、趣味志向などの判定)と、何時、誰にどのような電話やメールを送ればよいのかも判別が可能になり、個々の有権者への働きかけや選挙支援の呼びかけなどの作業が飛躍的に効率化されるだろう。

 候補者の為に数時間かけて書いていた選挙演説の原稿も数秒で書くことができてしまう。技術的な知識が無くても求める映像を簡単に作ることができる。ぱっとしない政治家はディープフェイク技術を駆使して自分を「盛る」ことも可能だ。大がかりな撮影スタッフも長時間の撮影や編集作業もなくなり、選挙を支える日々の業務の効率化で、人件費・コスト・時間が劇的に削減されるはずだ。

 つまり「莫大な予算が無くとも、これまでできなかったことができるようになる」(米政治コンサルタント)という意味では、生成AIは、候補者による資金力の格差を縮める一種のイコライザー(平等化装置)となる可能性もある。

 翻って有権者にとってはどうか。