「石井はさ、いつも怒りすぎなんだよ。そんなに怒ってばっかりだと、疲れるぞ」
プロデューサーという人と人との間にはさまる仕事のため、かつて“怒る”ことが多かった映画プロデューサーの石井朋彦さん。そんな状態を見かねた、ジブリの鈴木敏夫さんが教えてくれた「怒りをコントロールする術」とは? 石井さんの新刊『新装版 自分を捨てる仕事術』(WAVE出版)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
◆◆◆
怒りを10段階にコントロールせよ
ぼくは、もともと、とても感情的な人間です。
鈴木さんの下にいたころは、人と人とのあいだに挟まれることも多く、いつも怒っていました。
鈴木さんは、ぼくに仕事を教えてくれるときは、本気で叱ってくれました。でも、仕事相手に対して怒鳴ったりするのを見たことは、多くはありません。
ある日、某社の方が、決まったはずの仕事が突然、実現不可能になった、と連絡してきたときのことです。
ぼくは、その人の無責任さに憤り、怒りをあらわにしました。
鈴木さんにとっても、その状況は決して納得できるものではなかったと思うのですが、鈴木さんは表情を変えずに、いつもの口癖である、「まあ、いろいろある」と、つぶやいたあと、ぼくを部屋から出し、その担当者に電話をかけていました。
後日、その人から、きっちり補償に該当するお金を出させ、さらに次なる仕事の主導権も握ったことを知り、「さすがだなぁ」と感心したことを思い出します。
その後、鈴木さんに呼ばれました。鈴木さんはいつものように、タバコの葉をトントンと詰めながら、上目づかいで言いました。
「石井はさ、いつも怒りすぎなんだよ。そんなに怒ってばっかりだと、疲れるぞ」