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一度ミスっても終わりじゃない。ドラゴンズ・又吉克樹の復活を待つ

文春野球コラム ペナントレース2018 共通テーマ:長野

2018/04/24
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8回鈴木博、9回田島……では7回は誰なのか?

 2018年のドラゴンズはルーキー・鈴木博志の加入が大きい。ここまで9試合連続無失点という成績もさることながら、終盤の緊迫した場面でもファーストストライクをしれっと取ることができる落ち着きぶりが頼もしすぎる。オープン戦でボロボロだった田島もここまでは安定しているようだ。これで8回、9回は埋まった。では、7回を埋めるピースは誰なのか?

 それはやっぱり又吉だろう。

 4月13日のDeNA戦では7回に登板したが、相手の打線につかまって逆転負け。ここから5連敗が始まった。4月8日の阪神戦でも7回に登板して5点を失っている(試合は逆転勝ち)。森監督は「マウンドで泣きそうな顔をしているようなのはいても意味がない。ああいう場面ではもう使えない」と2軍落ちを命令した。

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 しかし、ルーキーイヤーから4年連続で50試合以上登板を重ねてきた実績は伊達じゃない。2015年は甲子園でサヨナラ負けをくらってマウンド上で涙を流した。2016年は1ヵ月で4敗を重ねて「野球を辞めたほうが楽になるかも」と口にしたこともあった。だが、そのたびに奈落の底から這い上がってきた。中学1年生の頃は身長145センチで、中学3年間と高校2年間は試合に出ることもなく、大学1年のときの最速は117キロ。バカにされたこともあったが、実力で跳ね返してきた。今年は常時150キロを出すことを目指すと公言している。又吉の根っこにはギラギラした向上心がある。

 又吉を育てた香川オリーブガイナーズの西田真二監督は2013年のドラフト会議直後、又吉について「やや完璧主義になりすぎ、自分で自分のピッチングを苦しくしてしまう欠点があります」と語っていた。たしかにそんな感じだ。去年も又吉は「毎回ラストチャンスだと思っている」「1回ミスったら終わりだと思っている」と口にしていた。完璧を目指すがゆえに自分を苦しめている――。そんな又吉に、西田監督はこうアドバイスを送る。「又吉であれば、しっかり腕を振り、ストレートでバッターを圧倒する。この原点は忘れてほしくないと思います」。

ルーキーイヤーから4年連続で50試合以上に登板している又吉克樹 ©文藝春秋

 落ち着き払った顔で爆速球を投じる鋼のメンタル・鈴木博が8回を抑え、負けた試合でもエゴサーチを欠かさず、その豪胆さから後輩たちから「海賊」と呼ばれている田島が9回を締めくくる。その前の7回をつなぐのは、向上心の塊、又吉だ。この3人が揃えば、ドラゴンズは一段階上に行くことができる。

 1回ミスっても終わりじゃないし、毎回がラストチャンスじゃない。そのことは自分の人生がよく表しているじゃないか。思いっきりストレートを相手打者に投げ込んでほしい。僕たちは又吉の復活を期待して待っています。

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