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団長のヤジには愛がある

 ちょうど一回裏2−0で楽天がリードしていた。なおも攻撃中で藤田選手の放った打球はショートの頭の上を越えるかと思われたが、ロッテ藤岡選手がジャンプ一番ファインプレーを見せた。

団長「うまいやないかぁー。ショートええどー」

僕「いや、今のロッテの選手ですよ?」

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団長「どっちだろうがいいプレーには拍手するもんや。あと最近の応援は賑やかやけど、静かに観るのも応援」

 確かに、団長のヤジには愛がある。例えば

「べべたぁー、べべた、べべた、べべたぁー」(最下位の意味)も自分のチームと最下位争いをしているチームに対して言ったヤジ。もちろんお前とこに言われたないわぁ。と返ってくる。決して圧倒的に勝っているチームからのものではないのだ。しかもこの後「お互い西武には勝とうぜー」と励ましの言葉も忘れない。

 阪急が身売りを発表する2時間前に社長室に呼ばれ、「今坂すまん」と社長直々に伝えられたのはこの方だけだろう。そんな方なのだ。

「ワシの家いこか? 家で飲も」

 ふと、我にかえる。俺は何をしているんだろ。。阪急ブレーブスへの愛を生涯抱きつづけ、こんなにも野球愛にあふれた尊い方に「もし楽天ファンなら」。あぁ、失礼極まりない。数分前の自分を殴りたい。情けない。すみません。

 テレビを消した。

僕「団長、カウボーイも一杯いきます!」

団長「よっしゃ。なんかつまむもんもだしたってー」

 則本はえええピッチャーやなぁ。山口高志思い出す、あいつも背番号14や。大谷やいうけどワシらからしたら山口高志のほうが速かったおもうでぇー。あとウィーラーもええ選手やなぁ。あの明るさはブーマー思い出すねん。あと山田に山森、大熊にマルカーノ……団長が懐かしそうに遠くを見つめカウボーイを飲み干した。

団長「ワシの家いこか? 家で飲も」

僕「えっ、はい」

 到着するや、タンスの中に大切にしまってあった陣羽織と当時音頭をとっていた扇子を見せてくれた。「これかっこええやろ? 写真とるか?」。僕のコラムのためだ。鼻の奥がツーンとした。

 僕が小学校時代の記憶、プロ野球珍プレー好プレーでの今坂団長がそこにいた。陣羽織をまとった瞬間、そこは西宮球場の内野席になった。

当時の陣羽織と扇子 ©かみじょうたけし

 時代とともにユニフォームも変われば応援のスタイルも変わる。しかし昔の復刻ユニフォームを身にまとい闘うKANSAI CLASSICが近年大盛り上がりで、今年のゴールデンウィークにはオリックスが阪急ブレーブスのユニフォームでライオンズを迎え撃つ。あの球場に響くダミ声を待っているファンも沢山いるだろう。

「おーいアマダー豚まんやぁー」

 仙台の球場が湧くのを夢みてしまう。

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