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大久保 皇室には制度的に男女の差別が厳然としてある。女性が天皇になれないだけでなく、さまざまな差別が存在する。でも佳子さまのお気持ちを忖度するなら、そういうことは取りあえず置いておき、皇族としての自分の立場を大いに活かしていきたい。そういう思いで活動されているのではないでしょうか。ご本人が制度に触れると、それは政治問題になるわけですから。

秋の園遊会での女性皇族と秋篠宮さま ©時事通信社

「家」と葛藤する佳子さま

河西 佳子さまは、今の社会をよりよくしていきたい気持ちが強い方ですよね。昨今の若者の特性でもあると、学生を見ていても思います。だから社会の状況を鑑みて、世代の声としてジェンダー平等を語っている。

 一方で大久保さんのご指摘通り、彼女が生きているのはジェンダー平等からはほど遠い世界です。そういう制度の中にいながらジェンダー平等を語り続ければ、やがて自己矛盾に陥ることになります。それも先ほど言った「大丈夫か」の意味だったりします。

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河西秀哉さん

山口 佳子さま推しの女性の気持ちがだんだんわかってきました。佳子さまは十字架にはりつけにされたキリストのような存在なのですね。あのように現代的な女性が、いかんともしがたい「家」というものの縛りを背負い、葛藤している。

 今を生きる私たちは、制度的には「家」というものを完全に乗り越えたけれど、気持ちの上ではまだ少し縛りを感じてもいる。だからこそ、「家」と葛藤する佳子さまの不自由さを尊く思う。気持ち、すごくわかります。

※雅子さまが見せる親としての愛すべきエゴ、紀子さまの娘への気遣い、「国民の娘」に徹する愛子さま、美智子さまに寄り添う黒田清子さん……など、「皇室の母娘問題」座談会の全文は『週刊文春WOMAN 創刊5周年記念号』でお読みいただけます。

大久保和夫
おおくぼかずお/ジャーナリスト。1947年生まれ。毎日新聞で30年近くにわたり皇室取材を重ねる。

矢部万紀子
やべまきこ/コラムニスト。1961年生まれ。「アエラ」編集長代理などを経て2011年朝日新聞を退社。

山口真由
やまぐちまゆ/信州大学特任教授。1983年生まれ。ハーバード大学ロースクールで家族法を研究。

河西秀哉
かわにしひでや/名古屋大学大学院人文学研究科准教授。1977年生まれ。著書に『平成の天皇と戦後日本』。

text: Makiko Yabe
photographs: Hirofumi Kamaya
hair & make-up: Sakura Ozawa (MAKEUPBOX/Yamaguchi)