クラーク氏は重要参考人たちのDNAを検査するべく、彼らの検体を採取するのに奔走してきた。そして、犯人逮捕に繋がる新たな証拠になりうるものを見つけたという。何か? クラーク氏は開口一番、それを教えてくれた。
「事件解決に繋がる証拠。それは“ミトコンドリアDNA”です」
なぜ“ミトコンドリアDNA”に注目したのだろうか
“ミトコンドリアDNA”とは細胞の中のミトコンドリア内にあるDNAのことで、母親から子に受け継がれる特性を生かして、家系を追跡するための研究に利用されている。
「DNAは個人個人で異なりますが、ミトコンドリアDNAは親族に特有のものです。母系の親族は同じミトコンドリアDNAを持っている。つまり、犯罪に関与したと考えられる男孫や女孫のDNAは、彼らの親族のミトコンドリアDNAと同じわけです。ジョンベネの身体や下着など犯行現場から採取されたDNAのミトコンドリアDNAを検査すれば、その中から、犯罪に関与したと考えられる男孫や女孫と同じミトコンドリアDNAが見つかる可能性が高いと考えたのです」
クラーク氏は男孫や女孫の親族にDNAの提供を仰ぎ、母系の親族の一人の信頼を得て、ミトコンドリアDNAの検査を行うための検体の入手に成功する。それは、数週間前に、その母系の親族の頬の内側の粘膜を綿棒で拭い取って得た検体で、現在、ラボで検査中だいう。
「その母系の親族のミトコンドリアDNAは、ラムジー家に侵入したと考えられる男孫や女孫のミトコンドリアDNAと同じはずです。そして、殺害現場で採取されたDNAの中からは、同じミトコンドリアDNAが見つかるとみています。つまり、警察は新たにミトコンドリアDNAを検査すれば犯人に辿り着けるはずです」
しかし、警察はすでにミトコンドリアDNAを検査しているのではないか? それについて、クラーク氏は否定的だ。なぜなら、警察は単独犯による犯行だと考えているからだという。
ちなみに、クラーク氏は、犯行に関与したと考えられる3人のうち、女孫の元夫が犯行を主導したと考えている。女孫の元夫については、ゴミ箱からこの人物のタバコの吸い殻を取り出してDNAの検査を行い、それは犯行現場に残されていたDNAと高いレベルでマッチしたという。現在、女孫の元夫のミトコンドリアDNAも女孫のミトコンドリアDNAとともに、ラボで検査にかけている最中だ。