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――日本では結婚後も、仕事によっては社宅だったり、転勤のある人だと家を買えないこともあります。

 エジプトでは、結婚するとなったら土地も買って家を建てるのが当たり前なんですね。だから、引っ越しを頻繁にすることにも驚きました。彼の仕事の都合もあって、7年間で4回も引っ越しましたよ。それまで私の人生で引っ越したのは、戦争と革命のときくらいです。

――そもそも恵さんは建築家でもあったということで、家のこだわりは人一倍強いのではないかと思うのですが、こだわるポイントはどんなところですか。

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 日本の家の場合、部屋を広く見せるために多くのものがオープンになってますよね。棚もそうだし、キッチンもオープンになっていて。でも、日本って地震が多いじゃないですか。本当は危ないからしっかり閉めておいたほうがいいと思うんですけど、狭い空間を工夫したいのかなって。

©︎細田忠/文藝春秋

 エジプトは完全に逆で、全部隠します。ゴージャスなものしか見せたくない気持ちがすごいあるんです。

――生活臭が出るのはNG?

 リビングに子どものおもちゃを置くなんて絶対禁止です。私の親が今の自分の家を見たらびっくりしますよ。

 あと、もともと畳文化だったからかもしれないけど、ソファがシンプルすぎて、似たようなものばかりだと思いました。飾りがないし、高さも低い。エジプトは床に座る文化がないので、ソファは高いし、超ゴージャスですよ。本当はそういうのが欲しいけど、日本では高いですね。エジプトだと大工さんがオリジナルで作ってくれるんです。

来日してからカルチャーギャップの連続

――他に日本の生活で「これは合わない!」と感じたことはありますか。

 雨にイライラしました。エジプトはほとんど雨が降らないので、12時から1時の間に雨、1時から3時までは晴れで、3時から5時はまた雨、みたいな天気が信じられなかったです。

 そもそもエジプトには「レイングッズ」という言葉がないんですよ。「傘」は、エジプトの言葉では「太陽のもの」と言います。

――エジプトでの「傘」は「日傘」のことを指すんですね。

 そうです。日本は湿気もすごいし、来た時は12月だったからめちゃくちゃ寒い。でも、そういうこと全部、彼が教えてくれなくて。「トランク1つで来ればいいよ。なんでもあるから」って。確かにそれはそうでしたけど、もっと教えてくれれば良かったのに、と思いました。

©︎細田忠/文藝春秋

 子どもが幼稚園に入った時も、運動会とか全然わからなくて、「遠足」もはじめて知りました。「お遊戯会」なんて、私はカードゲームの『遊戯王』のことだと思ったんですよ。あの作品はエジプト神話をモチーフにしているから前から知っていたので、幼稚園で遊戯王のカードを使って遊ぶんだと思った(笑)。だから夫には、「もっと詳しくちゃんと教えてください」といつも言ってます。