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――会話もない中で突然プロポーズというのは、日本では珍しいように思います。パートナーの日本人男性は、エジプトでの恋愛・結婚文化を知っていたのでしょうか。

 私がプロポーズした時、彼もすでに5年くらいカイロに住んでいたので、わかっていたと思います。でも、「すぐには結婚できないからちょっと時間をください」と言われて。私はその間もずっと、結婚しないならもう絶対付き合わない、と伝えていました。

 結局、彼は4月に帰国してしまったんですけど、その年の11月にはまた戻ってきてうちの両親に挨拶をして、12月に日本で結婚式をしました。

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©︎細田忠/文藝春秋

――エジプトでは婚前交際があまりないということですが、恵さんも恋愛はしなかった?

 私はエジプトの中でも田舎の出身で、近くに大学もありませんでした。長女だったこともあって、お金を稼げる職業に就くことを親から期待されていた面もあります。だから、早くカイロ、つまり都会に出て勉強をして、賃金の安定している建築家になったんです。

 生まれたときから不安定な政治状況がつきまとっていたこともあり、とにかく安定した仕事に就くことを目標に生きてきました。そんな中で恋愛なんて考える暇もなかった、というのが正直なところです。

 でも、自分で言うのもあれですけど、この顔だと、男の人が寄ってくるんです。そういうのは全部、お断りしていました。

――パートナーの方は、恵さんのルックスではなく内面を見てくれていると思った?

 たぶん……顔はあんまり褒められなかったから。それが逆に嬉しかったですね。私は顔じゃなくて、他のところで自分の魅力を見てくれる人が良かったんです。

 エジプトは褒める文化なのかもしれないけど、男の人に「かわいいね」って言われると、「この人、大丈夫?」ってなります。そういうところが、夫にはなかったです。

「結婚したら土地も買って家を建てるのが当たり前」なエジプト

――2016年から日本で生活をされているということですが、カルチャーショックはありましたか。

 お家が適当なことに驚きました。

©︎細田忠/文藝春秋

――「適当」とは具体的にはどういうことですか?

 エジプトでは、結婚を決めたらまず、家を作るんです。子どもが生まれるかどうかわからなくてもとりあえず子ども部屋を作るし、インテリアも細部までこだわります。それで、残ったお金で結婚式をするんですよ。でも、日本は逆でしょう。家のことについての考え方が違いすぎて、夫とケンカもいっぱいしました。