交際のきっかけはアジトの摘発だった
そんな熊井と藤田が交際を始めたきっかけとなったのは、フィリピン入国管理局によるアジトの摘発だった。同年11月13日、同局はマカティ市内で“ルフィグループ”のメンバー36人を拘束。難を逃れた熊井と藤田は混乱の最中に交際をスタートさせ、息を潜めるように同棲生活を始める。渡辺ら幹部がマニラ市のビクタン収容所に収容されたのは、それから1年余が経過した21年3月頃のことだ。2人が組織を脱退したのは、その直後だった。
「藤田(聖也)や小島、渡辺たちが捕まったこともあって『制裁を加える可能性がなくなったな』と思ったので組織を脱退しました」(藤田の法廷証言)
その後、1年以上に及ぶ逃避行を経て、2人は強制送還されたのだ。起訴状によると、被害者であるAさん、Bさんの被害総額は、それぞれ350万9000円、63万3000円。現在、藤田はBさんに対し、被害弁済と示談を済ませている。実は、多額の現金を用意したのは、熊井の8歳上の姉なのだ。
弁護人「Aさんに対する示談金も用意できている?」
藤田「はい」
弁護人「将来的に藤田さんは返済していく予定ですか?」
藤田「はい。全額自分が返済すると伝えました」
法廷で藤田は被害弁済をしている他のメンバーがいないことに触れ、次のように力説した。
「自分たちが加入していた組織として被害を出してしまったことは申し訳ないという思いがあって、出来れば被害弁済をさせていただきたいということになりました」
1時間半に及ぶ初公判の最後に証人尋問に立った藤田の母は、将来の展望を次のように語った。
「生活が出来るようにならないと(子供を)育てられないと思いますので。まずは仕事のサポート。私の親戚が小さい会社をやっておりまして、そちらの会社のほうで雇って良いという約束はしてもらっています」
熊井は藤田の母に電話で謝罪した
藤田の母も、また息子と同様に孫の顔を見る希望は叶っていないが、熊井とは連絡を取り合う仲だ。
「世間を騒がせるような大変な問題を起こしてしまって申し訳ございません」
保釈後、1人で子供を育てている熊井は藤田の母に電話でそう詫び、静かな口調で希望を口にしたという。
「2人で育てられるようになったときは2人で大切に育てていきたい」
熊井の初公判は、年内に予定されている。
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