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「女装家のAさんは、その日も女性の恰好で会場に来ました。ショートヘアに、白いカーディガンのような服を着て、膝下まであるスカート。着替えの入った紙袋かバッグを持って。イベントが始まると、上下セパレートで光沢のある銀色の衣装に着替えていました。右の胸元には『NASA』と書かれていて、宇宙服というか、ピンク・レディーの『UFO』みたいなイメージ。電飾のついた小さなリュックも背負っていました。ダンスフロアで他の参加客と楽しそうに喋ったり、踊ったりしていたんですよね。帰りは元の服に着替えて1人で会場を後にしました」

切断した頭部をスーツケースに入れて……

 ディスコイベントが終了したのは午後10時。同35分頃、近くの閉鎖したダンスクラブ前で合流したのが、謎の人物Xだったのだ。周辺の複数の防犯カメラは、ホテル街に向かう2人の姿を捉えていた。警察から画像を見せられた人物によれば、Aさんは上記のディスコイベントでコスプレする前の服装、小柄なXは白っぽい恰好だったという。二人は同50分頃、ホテル2階の部屋に入室した。

首狩り遺体が発見されたラブホテル ©文藝春秋

「Xが退室したのは午前2時頃。半日以上が経過した午後3時頃、もう1人がチェックアウトしないことを不審に思った従業員が部屋を訪ねて、事件が発覚した。被害者の遺体は全裸の状態で、浴室にうずくまっていた。争った形跡や防御創はなく、入浴中の無防備なところを襲われたと思われる。頭部は殺害後に切断。箇所や数は公表していないが、被害者の体には致命傷となった刺し傷があり、死因は出血性ショックだった。刃物とみられる凶器は見つかっていない」(捜査関係者)

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 服装を入室時の白系から黒系に替えたXは、Aさんの身元特定につながるような所持品を一切残さず、殺害現場から抜け出した。衣類、財布、携帯電話、近隣の有料駐車場に停めていた白い愛車のキー、そして顔が分かる頭部――。

スーツケースを引いた謎の人物(NHK NEWS WEBより)

「それらをスーツケースに入れ、立ち去ったものと思われる。GPSの追跡を逃れるためか、持ち去った被害者の携帯電話は、退室と同時間帯に電源が切られていた」(同前)