昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

会話力を磨くなら失敗談を勧めます

――自分の話を相手に面白がってもらうにはどうすればいいのでしょう?

 会話を盛り上げるコツの一つは失敗談です。僕なら自分自身に失敗談をいくつもしたいですよね。失敗談を挟むと、相手は面白がって気を引かれるものです。

 失敗談は、仕事でも学校時代の話でも、日常的なことでも、何でもいいのですが、最近のホットな失敗談がとくにお勧めです。失敗談は人間性がもろに出るものなので、聞いている方はその人が自分をさらけ出していることを素直に感じるはずです。人によっては俺も気をつけようと、戒めにするかもしれません。失敗談を数多く持っているということは、大げさかもしれませんが、人生が楽になることなのです。最近は失敗はしたくないと慎重に生きている人がとても多いように感じますが、失敗をたくさんしている人はそれだけ貴重な経験をしているわけで、そこには語るべき何かがきっとあるんだと思います。

 ただし、失敗談にもランクがあって、面白いと思われるようになるには多少経験はしないとでしょう。芸人さんではないけれど、いろんなところでネタおろしをしてみて下さい。最初、失敗の事実をそのまま話しても、あんまり受けないことに気がつくでしょう。ですけど、繰り返しているうちに、大受けすることがあります。あっ、このやり方が受けたと思ったら、メモにとってみたりして、だんだん秘訣がわかってくると思います。それからやっぱり大事なことは、聞いている相手の反応から学ぶことですね。自分の味を生かしたしゃべり上手になる一番の早道じゃないでしょうか。

©山元茂樹/文藝春秋

――話し手としてリスナーとの関係性はどうあるべきだと思っていますか?

 楽しいしゃべりをしなくては、と焦ったところでうまくいかないときもあります。欲張るとかえって空回りしますから、2割、もし3割ぐらいが盛り上がればそれで十分ではないでしょうか。僕は3時間番組なら30分、帯番組なら5日間のうち1日、面白い日があればいいと思うようにしています。

 僕が番組で気をつけていることに、リスナーとの距離があります。番組にヘビーリスナーがつくと、電話も手紙もメールも常連が占めるようになってきます。彼らは番組を熟知しているので、盛り上がりのツボを押さえた情報を送ってくれたりして、放送を送る側としては進行上、とてもやりやすくなるメリットがあります。

 でも番組はいろいろな人が聴いています。初めて聴く人もいるでしょう。面白いと思って、僕が常連とだけやりとりをしていたら、ほかのリスナーは疎外感を覚えますし、実際、番組は面白くならないと思います。僕自身、ひとりのリスナーとしてラジオを聴いているときに、常連となれあった番組を聴いて「なんか嫌だな」と感じることがあります。僕はラジオに限らず、テレビでも仕事以外でも、なれあっている状態が一番嫌いなんです。そんな思いがあるから、距離が近いリスナーの人にあえて冷たくすることもあります。

 リスナーとの関係でいえば、僕はリスナーより少し下に自分を置く感覚です。偉くもなんともないし、その代わり悪口を言われれば言い返すという、フラットでフィフティフィフティの関係が僕にとっては快適です。おかげで、リスナーや若い人にからかわれたりもしますが、それで幸せなんです。変な気を遣われて、ヨイショされるのは気持ち悪い。絶対嘘だと思いますから。

 放送を送る側の中には勘違いしている人がいますが、特権意識を持ったら終わりですよね。いつまでもリスナーにはフラットでありたいですし、そのことがいつでも誰でも入れる間口を番組につくるんじゃないかと思っています。