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ラジオでは少しリスナーを騙せるかな

――送り手として見て、テレビとラジオとではとくに何が違うのでしょうか?

 1985年にフリーとなり、ラジオとテレビの両方で仕事をするようになると、「吉田さんはラジオとテレビで性格が違うようにみえる」と、よく言われたものです。気にしたことがありますが、今はなんとも思いません。

 僕はラジオで焦る場面があっても平気でいられますが、テレビでは気になったのでしょうね。焦った表情を見られることを嫌だな、と意識したり。テレビは目が泳いでいれば動揺しているなとか、瞬時に視聴者にはわかります。話の内容よりビジュアルでありのままを伝える力が強いのがテレビの怖いところです。

©山元茂樹/文藝春秋

 ラジオでは少しリスナーを騙せるかな、と僕は思います。騙すというとあんまりいい言葉でないですが、長くやっているとそういう気持ちが若干でてくるのかもしれないですね。リスナーは出演者のしゃべっている内容や声色だけが判断材料ですから、それを元に自由な想像ができるし、僕も僕で遊ぶことができる。たとえば、本当はおかしくて心のなかで笑っているのに、あえて威丈高に振る舞ってみたりして、流れを変えることだってできます。同じことをテレビでやったりすると、「あっ吉田さん無理してる……」と、僕の意図と関係ない見方をされるかもしれません。

――ところで、吉田さんが最近「ど〜なってるの?!」と思っている社会問題とか、ありますか?

 僕は今、格差や貧困など、社会の底辺で起きていることに非常に関心があります。最近だと、「パワーハラスメント=パワハラ」や最低賃金の問題ですね。

 力のある立場を使って無理強いをするパワハラの加害者と違って、被害者は「いやです」と言えない弱い立場の人たちですから。パワハラの問題の根っこは、日本の上意下達の伝統が徹底してるんではと思います。

 会社で業務命令といえば有無をいわせない感じですよね。指揮命令系統が徹底していれば、職場がうまく回ると思い込んでいる人が少なくないのでしょうけど、本当にそうなのか。下達で気持ちを殺された側は、モチベーションが下がりますよね。無理強いの命令でも、一見うまく回るかもしれないけれど、組織全体で見れば、いいエネルギーになってないと思います。日本の組織や集団によく見受けられるこうした部分を変えていかないと、本当の活力は生まれないのではと心配です。

 今、パワハラの被害に遭っている人に、僕が人生を左右するようなことはなかなか言えないけれど、でも、一番自分を大切にしてほしい。自分を逆に追いつめたりとか守れない時代になっているけれど、深く考えて、本当に頭にきた時はやっぱり闘うべきと思いますね。後悔するのは長い人生を送る上でもったいない。たとえケンカで傷を負っても、その経験はあとで生きてきますから。

 それから最低賃金。先進国の中で日本の最低賃金はもう、相当低いですから。みなさんあんまり知らないから、安い時給に甘んじて働いています。でも、他の先進国との比較でいえば本当は1時間1500円はもらわないとおかしいということに、気がついてほしいですよね。気づいて、みんなで声を上げて、まずは1500円を獲得していこうと。パワハラはなくなりそうもないですが、おかしいと思ったことにはどんどん声を上げていくこと。そこから、格差もパワハラも解決する道が始まるんじゃないかと思います。僕も社会でいま進行しているいろんな問題を、楽しいしゃべりを通じてたくさんの人たちと共有して、一緒に盛り上げていくつもりです。

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