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なぜ廃墟住宅を手放さないのか…税金だけを払い続ける所有者に「この家を買いたい」と連絡した驚きの結果

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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しかし、老朽化が進む一方の別荘に対してなんらのアクションも起こさず、買い取りの打診にも応じないのでは、最終的にその別荘を一体どうするつもりなのか、やはり不思議で仕方がない。

0円で売るのに、6カ月かかった

今年、筆者は自宅周辺の別荘探しとは別件で、群馬県の浅間高原エリアにある別荘(築47年、床面積43m2)の処分の手伝いを行っていた。やはり相続で仕方なく取得していたその所有者さんは自力で処分を試みたものの、すでに著しく老朽化が進んでいたため売却はかなわなかった。

最終的に筆者がネットの不動産取引サービスに登録した。そこでようやく買い手が現れて、手放すことになったが、売却価格は0円。一般の仲介ではなく個人売買の形なので、要した時間や移動、手間などは当然すべて売主側の持ち出しとなる。事実上お金を払って別荘を処分したことになる。

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朽ち果てるまで放置する空き家所有者の無関心

「危険空き家」を代執行で解体する模様はしばしば報道で目にするが、解体を強行されるような老朽空き家の所有者は、金銭的事情も含めて、解決能力を失っていることがほとんどである。

だからこそ度重なる行政からの警告に応じることもできないまま、倒壊寸前に至るまで空き家を放置してしまっているわけであるが、もはや「解体」以外の手段が取れなくなる段階に至る前に、長い「無関心」の状態が続いた期間があるのではないか。

権利関係が複雑だった事情もあるかもしれないが、それもそこまで入り組むほど問題を先送りにしていた結果とも言える。

「空き家」は状態さえよければ案外手放す手段はあるもので(無償であれば地元業者が引き取ることも多い)、本当に手放すのが困難なのは、足を踏み入れる余地もないような荒れた山林や「農地」なのだが、関心がなければそんな判断にも至らないのかもしれない。

そして、いよいよ誰も欲しがらなくなるほど朽ち果てた段階になって初めて、ようやく重い腰を上げたという話も珍しくないが、そこまでにならないと決断しない心理の背景にあるものが、高度成長期やバブル期に醸成された「土地神話」が生み出した、不動産に対する絶対的な信頼感であるとすれば、もはやその認識のギャップは埋めがたいものになっていると言わざるを得ないだろう。