通常であればそのタイミングで売却を視野に入れていくことになるものだが、そこで別荘地特有の障壁に阻まれてしまう。
一般の住宅市場と比較すると、別荘の市場は格段に小さい。多くの別荘地は「利便性」の観点から評価できるような立地条件になく、賃貸物件も含め、一般の住宅としての需要がほとんど発生しない。定住目的の購入者もいないわけではないが、いずれにせよ限られた購入層のみをターゲットとしているローカルな市場にすぎない。大手仲介業者の参入もなく、別荘を専門とする地元業者が細々と仲介を続けているのが常である。
箱根や軽井沢クラスの著名な別荘地であればまた事情は異なるものの、歴史も浅く、いわば土地ブームの落とし子のような高度成長期以降の別荘地は、とにかく数を多く販売することに主眼が置かれていたために、建物の造りも簡素なうえ、敷地面積も狭く、今日の別荘購入者のニーズを満たせる水準にない。
これは千葉の限界分譲地も同じだが、別荘地の場合はより深刻で、現在の法令では建築許可が下りないような急傾斜地にまで別荘が建てられていたりする。元々は眺望を優先して建築されたものの、今となっては周囲は深い雑木林となり、建て替えも解体もできず放置され続けている。朽ち果てた放置別荘の存在は、多くの別荘地とその管理者にとって頭の痛い問題だ。
九十九里平野に点在するリフォーム不可能な廃別荘
筆者の自宅近所にも、そのような、長年足を踏み入れていないような古別荘が多数放置されており、もはやリフォームも不可能な廃屋も目立つ。
その中でも、まだ再利用できると思われる放置別荘の所有者を登記簿から調べ、買取の相談を行うために直接その所有者の自宅を訪問したり、あるいは手紙を出したりしてコンタクトを試みていた。
問い合わせた別荘はいずれも売りに出ておらず、ただ放置されているだけのものなのだが、それにしても、なぜ使ってもいない別荘をただ朽ち果てるまで放置し続けているのか、筆者はずっと不思議だった。