2020年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。地域部門の第4位は、こちら!(初公開日 2020年5月4日)。
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始まりは15年前のことだった。その日、私はいつものように“パトロール”をしていた。
廃墟探索を趣味にしている私は、まだ誰も知らない廃墟を開拓するのが好きで、今も暇を見つけては車で各地を巡回している。既にネット等で公開されている廃墟を訪れるのとは異なり、何が飛び出すのか分からないドキドキ感がたまらないのだ。
計画が頓挫した別荘地に残された廃墟
その日は、岐阜県内の人影もまばらな観光地の近くに、廃れた道の入口を発見した。建物が廃れると、そこに至る道も廃れる。つまり、廃れた道の先には、廃墟が待っていることが多い。
私が発見した道路は、舗装されていたものの、路面に落ち葉が堆積し、穴だらけだった。左右から伸びた草木を車で掻き分けながら進んでいくと、大きめの枝が車体を擦る“キー”という音が聞こえてきた。あまり聞きたい音ではないが、車の傷は廃墟探索を趣味にする者にとっては勲章のようなものだ。
しばらく進んでいくと、その場所の全体像がおぼろげながら掴めてきた。同じような廃れた道が縦横に交差し、網の目状に伸びているのだ。どうやら、別荘地として区画整理したものの、計画が頓挫した土地のようだ。同じような光景を、余所でも見たことがあった。しかし、これといった建物は見つからない。「今日は空振りかな……」と諦めかけたとき、一軒の小屋が見えてきた。
小屋の中に広がっていた異様な光景
かつては明るい青色だったと思しきトタン屋根は色褪せ、全体的に赤茶色に変色している。道路から見た正面側には2枚の窓がついていたようだが、片方は完全に無くなり、そこから建物の内部が見えてしまっている。もう一方は木製の雨戸が残っていたが、こちらもところどころ木が剥がれ、ここが紛れもない廃墟であることを物語っていた。
私は車から降りて、小屋に近づいた。そして、軽い気持ちで中を覗いたのだが――その瞬間、異様な光景に背筋が凍りついた。6畳ほどの狭い室内に、色鮮やかな雑誌の切れ端がビッシリと敷き詰められていたのだ。
何百枚……いや、何千枚もあるだろうか。しかも、その全てに、裸の女性が写っている。どうやら、これらは全て、元はエロ本だったようだ。