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「僕は切っていない」と彼は言った

 ただ、彼はとても人見知りが激しく、接触には気を使った。仲間の中から最も話が合うメンバーを一人選定し、他は離れた場所で待機していた。そのメンバーは、まず雑談で盛り上げた後、なぜエロ本を切るのかと本題を切り出した。

 しかし、彼は「僕は切っていない」の一点張りだった。そして「遠くから不法投棄しにくる奴がいるんだ」と、不可解な“言い訳”を放った。私たちの目の前で切っているのに……。

切れ端とともに捨てられていた弁当の空き箱

 その後も、我々と彼との不思議な交流は続いた。それと並行するように、彼は小屋周辺に留まる時間が増えていった。だが、事態はここから思わぬ展開をみせる。男が小屋の前で、車上生活を始めたのだ。そして1ヶ月後――最も恐れていたことが起きた。

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“小屋”にとりつかれた日々の終わり

 ある週末の午後、探索仲間の一人から「今、警察の事情聴取を受けています」とのメールを受け取った。詳細を聞くと、小屋の前で男の死体を発見し、通報したのだという。

 発見したときには、彼は小屋の前で倒れ、既に事切れて硬直している状態だった。警察や消防が駆け付け、付近は緊迫した空気に包まれたという。はっきりとした死因はわからないが、車上生活を始めてからはきちんと食事を摂ることもなくなっていたようだ。

 

 後日、私は第一発見者となったメンバーと共に現場を訪れ、お線香をあげて献花した。最悪の結末を迎えてしまったが、いつかこうなるんじゃないかという予感が、頭の片隅にあったのも事実だった。なんとか防ぐことはできなかったのか。そんなことを思いながら、心からご冥福をお祈りした。約5年に及ぶ、“小屋”に取りつかれた日々はこうして終わった。

撮影=鹿取茂雄

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