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クリストファー・ノーランはなぜ“原爆の父”を映画化したのか? 名監督が惹かれたオッペンハイマーの“矛盾と欠点”

クリストファー・ノーランはなぜ“原爆の父”を映画化したのか? 名監督が惹かれたオッペンハイマーの“矛盾と欠点”

2024/01/24
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ノーランがこだわった映画のディテール

 複雑な人物であるオッペンハイマーを演じるのは、「バットマン ビギンズ」はじめノーラン作品の常連であるアイルランド出身のキリアン・マーフィー。彼がソフト帽を被ったその姿は、オッペンハイマーの記録映像から抜け出てきたかのようだ。

「僕もキップ・ソーンと話すことができました。彼は実際にオッペンハイマーが講義中、どのように動いたか、パイプの持ち方などについてなど、沢山のことを直接教えてくれたんです。それはとても興味深いもので、役作りの上で非常に役立ちましたが、最終的に現場で頼りにしたのは脚本です。もちろん事前のリサーチも、ある種のサブリミナル的なものとして有効ではあるのですが」

 オッペンハイマーはツバの広い中折れ帽(フェドーラ帽)を被った姿がとても印象的だが、これについてマーフィーは自己神格化の一種の手段だと語る。

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© Universal Pictures. All Rights Reserved.

「衣装や小道具はとても重要でした。衣装テストをした時に実感したんです。オッペンハイマーは、かなり若い頃から自分自身を神話化していましたが、そのために帽子、スーツ、そしてパイプを自覚的に使っていたんです。そのことは映画の中でも見てとれます。これらを用意してくれた素晴らしいスタッフ、そして信じられないほど明確なビジョンを持った監督のおかげで、この映画は最も素晴らしい形で完成できたんです」

 賞レースの行方も気になるが、2024年の日本公開が待たれる。

クリストファー・ノーランはなぜ“原爆の父”を映画化したのか? 名監督が惹かれたオッペンハイマーの“矛盾と欠点”

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