昨年11月に刊行された『オタク用語辞典 大限界』が話題。名古屋短期大学現代教養学科で日本語学ゼミに在籍する学生12名が、「オタク用語」約1600項目を採集し、語釈と用例を付したこの辞典。どのように生まれたのか。ゼミの指導教官である小出祥子さんと、国語辞典編纂者として活躍する飯間浩明さんが語り合った。

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「次の現場」という教え子の一言

 飯間 『オタク用語辞典 大限界』(三省堂)は、小出さんのゼミの学生さんたちがオタク用語を解説した辞書です。以前、この元版が大学祭で売られたという話を聞いた時から、ぜひ読みたいと熱望していました。今回、内容がパワーアップして一般書店に並びました。タイトルは戦前の大辞書『大言海』と「限界オタク」を掛けていますね。「限界オタク」をこの辞書で引くと〈オタクの中でも、推しへの愛情や熱量が限界に達しており、そのために言動が痛々しく、人間としても限界を迎えてしまった究極のオタク〉。一般人にも有益な情報です(笑)。

小出ゼミ生12名が制作 

 小出 みなさんに面白く読んでいただけるといいのですが……。

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 飯間 同種の辞書はこれまでもありましたが、「具体的に誰が使っているのか」が必ずしもよく分かりませんでした。この辞書は小出ゼミの彼女たち自身が「オタク生活」の中で使っている言葉、見聞きした言葉を記録したところが画期的ですね。

 小出 ありがとうございます。

 飯間 小出さん自身は、オタク用語には詳しいんですか?

 小出 いえ、恥ずかしながら(笑)。もともと、ゼミの学生たちの話すオタク語の意味がまったくわからなくて。「先生、次の現場決まったからバイトがんばらなきゃ」と言われ、てっきり工事現場か何かの仕事をするのかなと思っていました。そうしたら、全然違う。

 飯間 ははあ、なるほど。「追っかけ」の現場ということですね。

 小出 おっしゃる通りです。好きなアイドルのコンサートに当選したから、チケット代や交通費、グッズを買うためにアルバイトをがんばらなきゃ、という意味でした。