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自己破産しても死ぬまで損害賠償が続く…フル電動「電ジャラス自転車」無登録走行に潜むとんでもないリスク

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genre : ライフ, 社会, ライフスタイル

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しかし免責はされない恐れがある。破産法第253条第1項3号には「故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」が定められているからだ。最初から違法を認識しながら、こうした電ジャラスを無免許で運転していた場合、それは「故意又は重大な過失」と認定される可能性が否めない。

するとどうなるか。すべてを吐き出して自己破産した上で、その後、収入の4分の1が常に差し押さえられる人生が待っている。

一方の被害者(または遺族)の方はどうか。事故直後は泣き寝入りとなる。保険がないからだ。その後、損害賠償は長い年月をかけて加害者の収入の4分の1でチビチビ支払われるものとなる。

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これらの悲劇を救うものはなにもない。セーフティーネット、ゼロ。だれも助けてくれない。だれが悪いからこうなったのだろうか。電ジャラス自転車に乗っていること自体が、ひとえに悪いのだ。

なぜ高額、高リスクの電ジャラスを買うのか

それに、こういう自転車が「ゴツくてカッコいい」と思う前に、考えてみたほうがいい。もし故障したらどうするつもりなのか。

ほぼすべての自転車ショップ(プロショップ、チェーン店など含む)は、この手の電ジャラスの修理を拒否する。なぜなら、これらは自転車じゃないからだ。「違法なものは修理しません」。HPでもそう明言されているし、そう書かれたポスターが店舗入り口に貼ってある。

では、オートバイ屋さんなら修理してくれるかというと、これも修理できない。扱いメーカーが違うし、そもそもオートバイ屋さんが手がけているのはレシプロエンジンだ。

最終手段として、自分で直せるならそれもいい。しかし直せるか? 直せない。ネットで買っても、30万円前後するような電ジャラスが、ここでゴミ化するわけだ。

私には本気で分からないのだが、そういうリスクを背負って、結構な金額を払って、なぜこれを選ぶのだろうか?

自転車なら自転車、オートバイならオートバイに乗ればいいじゃないか。現在は自転車方面なら“e-bike”のいいやつが、オートバイならオートバイで、電動原付が普通に出ているのだから。

買う前に熟慮すべし。それは今後の人生のためにもだ。

疋田 智(ひきた・さとし)
自転車評論家
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。
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