30歳を目前にやりたい事が何もなくなった。とりあえず何か時間を埋められるものが欲しかった。残りの人生まだ50年も残っているかもしれない。映画を作ってみたらもしかしたら残りの時間を埋められるかもしれない、と漠然と期待して映画美学校の説明会に行った。
それまでは一般企業で働いてきた。ものづくりと無縁の人生。こんなに真剣になれるとは思ってなかった。
誰に頼まれるわけでもなく作る自主映画は、道端や庭先で絵を描くのと何も変わらない。なぜ映画を作るのか、作品によって動機も変わるだろうし、その動機を正確に言葉にできる気もしないが、道端で風景の絵を描くのと同じように「綺麗だな」とか、「ずっと見ていたいな」とか、そんな感情を書き留めておきたいのだと思う。
話すことで感情の輪郭がわかった気がする
2023年、初長編作『はこぶね』を全国順次公開させて頂くことができた。『はこぶね』で僕が書き留めておきたかった感情はなんなんだろう。物語を作る時には関心の赴くままに書いているから自分でもうまく言葉にならなかった。だけど映画祭で入選し、劇場公開をさせて頂き、いろんな人と『はこぶね』について話すことになってようやく、その感情の輪郭がわかった気がする(その制作経緯については『はこぶね』の公式HPにnote記事としてまとめました。ご興味があればぜひお読み頂きたいです)。