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ビデオで映画に出逢いモデルを経て俳優・監督に…『クオリア』で日本の“抑圧の縮図”として養鶏場を描く

期待の監督 牛丸亮

2024/02/03

source : 週刊文春CINEMA 2023冬号

genre : エンタメ, 映画

note

 ビデオが僕と映画の出逢いのきっかけです。テレビの『ナイトライダー』を録画したり、レンタル店でハリウッド作品とか借りたりして。その後、親が離婚して母子寮にいた時、談話室にあった『霊幻道士』とかのビデオで寂しい気持ちを癒やしてもらいました。

バイト先の店員特典で浴びるように鑑賞

 田舎で映画館へ通うカネもないから、ビデオがシアター代わりだったんです。僕がやったバイトも個人経営のレンタル店。『パルプ・フィクション』が注目された時期と重なっていたので、店員特典で浴びるようにミニシアター系映画を観ましたね。

牛丸亮監督

 憧れの映画界へ飛び込もうと、まず中学生の時に劇団東俳の募集に応募して合格したんです。が、母から「ウチはカレーに肉なんて入れる余裕もないのに! レッスン料なんか払えないよ」なんて叱られまして(笑)。

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 その後、15歳でジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれ、身一つで17歳で上京。手探りでモデルから現在の俳優の道に入っていきました。

オーディションなしで選んだキャスト

 僕にとって父のように大きな存在が山本政志監督なんです。『ジャンクフード』を観て、「この世界で絶望せずに生きられる!」と感激しました。その感動を抱え、監督のワークショップに通いました。良心的な金額で短編を撮影する内容も充実していて、人生最大の収穫でした。『クオリア』の脚本を「面白いじゃん!」と言って、応援して下さった、まさに“心のオヤジ”です。

©2023映画『クオリア』製作委員会

 今回自分で撮ることになり、友人の賀々贒三君に脚本を託しました。彼と侃々諤々議論し、養鶏場という限定された空間を日本の“抑圧の縮図”として描いてもらえました。

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