周りから見たら引いてしまうほどのお笑いへの執念を持ち、一方で社交性が皆無の男を演じた岡山天音。普段の姿はごく穏やかだが、お笑いに賭けた“カイブツ”の執念は理解不能ではなかったという。

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「伝説のハガキ職人」の印象を尋ねると…

「『すごくいびつに伸びてしまった木』というか、初めて見るタイプなので、その奇妙さに面白さを感じましたね」

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「伝説のハガキ職人」と呼ばれた放送作家/作家ツチヤタカユキ氏の自伝小説を映画化した今作で主演した岡山さん。原作を読んでのツチヤ氏の印象を尋ねた答えがこれだった。

 それも不思議はない。「自分に“お題”を100~200個出し、一日かけて2000のボケを考える」など、お笑いに熱中する関西の10代としても、どうかしているレベルで打ち込んだエピソードを持つ存在なのだから。

©深野未季/文藝春秋

「『どう演じるんだ、訳わかんないぞ?』という感じではなかったです」

「ただ、『すごく似てるな』というのも同時に感じたんです。自分の皮を剝いて剝いて、芯に近いところは共通点があるんじゃないかという気がしたんですよね。だから、『どう演じるんだ、訳わかんないぞ?』という感じではなかったです」

 映画の中とまったく違う、温和な笑顔で語る岡山さん。どういうところが似ていると感じられたんですか?

「そうですね…何かを自分に課して、それをやらないと自分を自分として認められない、達成してやっと『これだけやったんだから今日生きてていいだろう』みたいな、10代の頃は、ツチヤさんほどじゃないにしても、わりとそういう考え方をしていた気がします」