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ものごとをツチヤの目で見るしんどさ

 共感は演技の入り口となったが、その先に難しさがあった。

「所作や、どういう佇まいでいるかというのはかなり考えました。ツチヤさんのドキュメンタリーを見て、実際のツチヤさんのクセを取り入れるかどうか、“映画の中のツチヤタカユキ”にとってそれが必要なのかということは、監督とよく相談しました。ただ真似をすればいいということではないですし」

©深野未季/文藝春秋

 “映画の中のツチヤ”は、挙動不審である。お笑いに打ち込みすぎている上に「人間関係不得意」(自身を端的に言い切ったフレーズ)なため、周囲の人間とコミュニケーションが上手く取れない。ツチヤが泣き、わめき、酔いつぶれ、醜態をさらす演技は痛々しくも笑いを誘う。

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「楽しんで見てもらえたなら、よかったです(笑)。でも撮影している間はしんどかったですね。ツチヤの人生の中の、嵐みたいな激しい時期の話ですから。ツチヤの価値観に同調して、ツチヤの目でものごとを見ることになるので…。関西弁も大変でしたし」

大阪出身・菅田将暉らとの関西弁でのやりとりは「がんばりました(笑)」

 共演で、大阪人の役を演じた菅田将暉、松本穂香はともに大阪出身。そのやりとりはちゃんと関西人同士のテンポになっている。

「がんばりました(笑)。方言指導の方も付きっきりで直してくださったんですよね。セリフ一つ一つの言い方、タイミングなんかも。これが嘘くさく見えると、映画が全体的にダメになっちゃうなと思って」

©深野未季/文藝春秋

 監督の、作品全体を見据える目が信頼できたことが、今作については大きかったと振り返る。