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会社員時代に閉じていた感性を外に向けて

 やることがなくなって始めた映画制作は、自分という感覚器官をつぶさに世界に向けるきっかけになった。映画制作の過程は、己を知って、世界を知るプロセスになってくれる。会社で働いていた時には不要で閉じていた感性や知覚を自分の内面に、そして外の世界に向けることが必要だから。

 

 その一方で、架空の物語を考えている時がいちばんこの世界で生きる孤独を紛らわせられている感覚もある。

 現実の世界に向き合う手段でもあり、架空の世界に浸る現実逃避の手段でもある。映画制作に対してそんな矛盾した感覚を持っている。

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『はこぶね』
STORY
事故で視力を失った西村芳則(木村知貴)は、小さな港町で伯母(内田春菊)に面倒を見てもらいながら生活している。かつて一緒に通学していた同級生の大畑(高見こころ)は、東京で役者をしながら、理想と現実の狭間で憂鬱なときを過ごしていた。ある日、西村は大畑と偶然再会する。町にはゆっくりと陽が落ち、そこで暮らす人々はそれぞれの帰路につく。二人は、その景色にそれぞれの記憶と想像を重ねる。

STAFF & CAST
監督・脚本:大西諒/出演:木村知貴、高見こころ、外波山文明、内田春菊、五十嵐美紀、愛田天麻、森海斗、範多美樹/日本/2022年/宣伝・配給:空架 -soraca- film/全国公開中