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多数派となった「持てる者」に政策の比重を移していく

 そうした背景から不動産を政策的に考えるならば、国で不動産価格が今後もどんどん上昇していくという青写真を描くことは決して悪い政策ではない。家の値段が上がるということは、実は多くの「家の所有者=持てる者」を満足させる政策となるからだ。一部の「持たざる者」の批判はどうでもよく、多数派となった「持てる者」に政策の比重を移していくことはポピュリズムを標榜する現代の多くの政治家が採りうる有効な策なのだ。

家の値段が上がることは多くの「持てる者(所有者)」を満足させる ©iStock.com

 アベノミクスでは日銀マネーや年金マネーを使って必死に株式市場を支えているといわれる。しかし、この政策は本当に国民から支持を受けているのだろうか。個人金融資産残高は2016年度において約1809兆円であるが、そのうち株式は約96兆円と全体のわずか5.3%にすぎない。また株式市場における個人投資家の株式保有割合は全体の17.1%にすぎず、外国法人が3割以上を占め、その他も事業法人や信託、生損保などが主体となっている。

 株式市場をどんなに支えたところで喜んでいるのは国民ではなく外国人などという皮肉な結果になるくらいなら、国は不動産を所有する多くの「持てる者」の機嫌をとることに力点を置くべきなのである。

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国は郊外の売れない家をバンバン買うべし

 これまで国は国有地の多くを民間に放出してきた。ただマーケットは「売り」よりも「買い」の圧力を加えたほうが価格は上昇する。すなわち国が不動産を「買う」側に回るのだ。不動産は平成バブル時とは異なり、すべての不動産が値上がりする状態ではなく、マーケットから取り残された不動産、たとえば大都市郊外で今のシニア層が持つ家などが売れずに放置されるようになってきている。こうした家をバンバン買い取る。

 沈滞していたエリアの不動産マーケットが動けば、不動産が現金に変わり、消費が活発になり経済が活性化するのである。不動産価格が上がることで国民の所有する資産価格が上昇する。含み益が増えたことに気を良くした国民がお金を使い始めることにつながるだろう。

 現代は株が上がるよりも不動産が値上がりするほうが、実は多くの国民が幸せと思うかもしれないのだ。

 もちろん、こんなことが長続きするはずがない。だが、こうした人々の「欲望」の上に成り立つのが資本主義であるならば、今こそ「株より不動産」なのである。