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「杉良太郎のままで死なせてください」本人が初めて明かした「二代目・長谷川一夫」指名の真実

時代劇界の舞台ウラ

2024/01/28
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勝新太郎に「あなたじゃない!」

 1984年に先生が亡くなり、葬儀では「血縁の近い方からご焼香を」とアナウンスがあったんだけど、成年さんは「杉さんから」と言う。「何言ってるの。成年さんでしょ。あなたが長男でしょう」「いえ、杉さんですから」「駄目だよ。成年さんが長男なんだから」。

 そんな押し問答を繰り返していたら、横から勝新太郎さんが「それじゃ、俺から」と進み出た。途端に成年さんが「あなたじゃない! 杉さんが最初なんだ!」とえらい剣幕で怒ってね。勝さんは「あ、そうか」と席へ戻っていった。最終的には成年さんに先に焼香してもらったけれど、周囲は「なぜ、ここまで杉良太郎を?」と怪訝な顔をしていた。

1957年、第5回菊池寛賞授賞式での長谷川一夫 Ⓒ文藝春秋

 焼香をしながら、長谷川先生はどんな思いで僕を二代目に指名してくれたのか考えていた。先生には息子さんがいたけれど、僕に対しての期待が大きかったのかなと今思う。心の内は苦しかったんじゃないかな。

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 それに、年を重ねた今なら、先生が二代目を望んだ気持ちがわかるような気がする。僕も、二代目杉良太郎を育ててみたいと思ったことがある。自分が人生をかけて築いてきた杉良太郎演劇を誰かが受け継いで後世に伝えてくれたらどんなに素晴らしいだろう。でも、命がけで芸に挑もうとする若い人っていないんだよ。だから杉良太郎は一代限り。最後まで杉良太郎のままで生き、消えていく。それしか僕にはない。

本記事の全文、および杉良太郎の連載「人生は桜吹雪」は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。

■杉良太郎 連載「人生は桜吹雪」
第1回「安倍さんに謝りながら泣いた」
第2回「住銀の天皇の縋るような眼差し」
第3回「江利チエミが死ぬほど愛した高倉健」 

「杉良太郎のままで死なせてください」本人が初めて明かした「二代目・長谷川一夫」指名の真実

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