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「撮影開始前に障害者を出演させたいという石井裕也監督の直談判に歴彦氏が賛同し実現しました。しかし、歴彦氏が逮捕されると状況は一変。障害者の団体などから抗議が来たら困ると恐れたのか、『このクオリティでは出せない』と言い出し撤退を決めた。歴彦氏の受賞は、映画人からカドカワへの当てつけと専らの噂です」(映画関係者)

アメリカではベストセラーになった原書

 夏野社長が実権を握って以降、同社の映画部門は岐路に立たされている。

「夏野社長が『どうして赤字が多いんだ!』と叱責した際には、役員らは『歴彦さんのせいです!』と即答したとか。製作費5億円以下の作品は撮るなとお達しまで出て、2025年のラインアップはスカスカ。実写映画は『仕分けする』と発言するほど愛がない」(別のカドカワ関係者)

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夏野社長を直撃

 同社の撤退後、「月」を配給したスターサンズに取材を申し込んだところ、

「映画を仕分けする、とのカドカワ社長の発言は映画製作者としての姿勢を問われかねないものであり、日本を代表する映画会社の言葉としては大変残念であり、遺憾です」

 とコメント。一方、「月」の石井監督は「私から言えることは何もない」と濁しつつ、本の刊行中止について「出版にかかわる人間が批判の声を恐れて表現を萎縮させるのはおかしい」と語った。

 当の夏野社長を直撃した。

――刊行中止の経緯を教えて欲しい。

「あーこれちょっと広報を通して頂けますか。僕は詳しくはよくわからないので」

質問状に対する回答は…

――刊行中止には夏野社長ご自身の関与はあったのか。

「ないです。現場の編集者の判断を最大限に尊重していますので、そこを支持する形をとっています」

 質問状を送付すると、

「刊行中止が決定しているため、回答を控えさせていただきます。映画『月』について、当社はお答えできる立場にございません。(実写映画は)大きくヒットが狙える作品に的を絞って勝負し、投資回収率を上げていくことで収益性改善を図る方針でございます」と回答があった。

 売上高が2550億円強(22年度)と過去最高益を達成したカドカワ。面倒ごとからは“逃げオジ”でも、利益が上がれば、恥ではない!?