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「女優のなれの果て」を演じてみたい

春日 今日のイベントには若い女優さんや芸能関係の人もいらっしゃっているようなんですが、今後、映画界、芸能界という世界の中で生き抜いていくためにメッセージを何かいただけないでしょうか。

岩下 えー、難しいわね。これはやっぱり運もあるし……。うーん、でも何の職業でも言えるんでしょうけど、努力ですね。努力なくして、成り立たないかなという感じはしますね。

©志水隆/文藝春秋

春日 やはり日々の研鑽というか、そういったものが大事になってくるんですね。今後の日本映画界に対してこうあってほしいという思いはありますか。

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岩下 そうですね、今はわりと映画の撮り方も昔と変わってきましたね。ただ映画っていうのはテレビやパソコンではなくて、大きなスクリーンで見て欲しいと思うし、映画は永遠に不滅であってほしいとそれだけは思っています。

春日 岩下さんご自身もまだまだ盛り上げていくお気持ちで。

岩下 そうですね、私もあと1本、自分が燃え尽きる映画をやりたいなと思っています。ビリー・ワイルダー監督でグロリア・スワンソンが主演した『サンセット大通り』っていう作品があるんですけど。ある大女優がかつての栄光にしがみついていて狂気に囚われていく内容なんです。この、「女優のなれの果て」を演じてみたいなと思っています。

春日 それはご自身の中に何か共感というとおかしいですけれど……。

岩下 いや、共感じゃないんですよ。『サンセット大通り』はものすごいナルシストの女優さんなんです。私はどっちかっていうと自己否定、自己嫌悪が押し寄せてくるタイプなので、ああいう女優さんにものすごく憧れるんです。ああいう「ザ・女優」みたいな女優を演じてみたいなって思っています。

春日 岩下さんが演じる上で大事にしていることは「挑戦」とか「変化」だと本の中でおっしゃっています。

岩下 私はほんとに普段は平凡な生活を送っているんですよ。性格も普通ですし、あんまりエキセントリックな部分もないので、役柄では日常の普通の自分からどこか別のところに飛びたいと思うんです。

春日 一昨日、あるテレビ番組の収録で岩下さんとご一緒したんです。岩下さんの横に司会の方が座っていたんですが、その方とお話をされている時のお二人の雰囲気が『サンセット大通り』にぴったりに見えました。

岩下 番組名は言っちゃいけないんですか?

©志水隆/文藝春秋

春日 えー、どうなんでしょうか……。4月に放送になりますが、岩下さんとその方が、このふたりで『サンセット大通り』やったらいいなという感じで。相手の方も「撮影されるときはお声掛けください」みたいなこと言ってましたけど……。

岩下 『ゴロウ・デラックス』!

春日 まさにその稲垣吾郎さんです。妄想と現実の区別がつかない大女優にとりこまれてしまう若い男というのが実に似合っている。ちょうどわたしの正面におふたりが並んで座っているという贅沢な状況だったんですけど、岩下さんの話に稲垣さんがぐんぐん引き込まれていく様子が『サンセット大通り』に見えてきてしまったという。

 残念ですが、早くもお時間になってしまったようです。最後にみなさまにメッセージを。

岩下 みなさまほんとに本日はありがとうございます。春日太一さんのおかげでこんなに素敵な本を作っていただいて今はもう嬉しくて、いかにたくさんのかたに読んでいただけるかなと思って、こうやってあちこちで頑張っております。今日、八重洲ブックセンターというところに初めてきたんですけど、今、本離れが進んでいるとよく聞きますが、ここにいらっしゃるみなさんは本が大好きだと思うんです。これからも本をいっぱいお読みになって、そして映画もいっぱいご覧になって、好奇心と向上心を忘れないで元気にお過ごしください。本日はありがとうございました。

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INFORMATION

岩下さん、春日さんおふたりが出演される『ゴロウ・デラックス』は4月19日0時58分からTBS系列で放送予定です。単行本にはないエピソードが語られるかも!? ぜひご覧ください!

美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道

春日 太一

文藝春秋
2018年2月26日 発売

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