2021年3月23日、北海道旭川市で廣瀬爽彩さん(当時14歳)が凍死した状態で発見されてから、3年の月日が経った。わいせつ写真の要求、自慰行為の強要……爽彩さんが中学入学後に受けた、凄惨ないじめの数々。しかし学校側はその事実を認めようとしなかった。

 ここでは、徹底取材によって事件の真相に迫った『娘の遺体は凍っていた』(文藝春秋)から、序文を抜粋して紹介する。取材班が動いたきっかけは、1通のダイレクトメールだった。

廣瀬爽彩さん(当時14歳)

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〈廣瀬爽彩という児童(ママ)が亡くなりました。彼女の死について調べてほしいです。学校でのイジメがあり事件に巻き込まれた様子なのですが、(略)どうかこの事件に注目し、真実を調べてあげてほしいです。亡くなった爽彩さんの無念を晴らしてあげたいです〉

 すべては2021年3月26日に文春オンライン特集班の「公式Twitter」に寄せられた、支援者による1通のダイレクトメッセージから始まった。14歳の女子生徒が亡くなり、その背景にはイジメがあったという内容だったが、その時点で彼女が失踪から遺体で見つかったことを報じているメディアはなく、当初は事件の詳しい情報が掴めなかった。

 この支援者のメッセージを元に取材班は被害者の母親や親族とコンタクトを取り、4月1日に、北海道・旭川へ飛んだ。その時は、爽彩さんが想像を超える凄惨なイジメ被害に遭っていたこと、その後取材が60日間にも及ぶことなど、知る由もなかった。

隠蔽されかけていた事件

 東京では既に桜が散り始めていたが、4月の旭川は花見どころか街には雪が残り、上着が必要なほど寒かった。取材を通して会った母親や親族は、爽彩さんの死が受け入れられず、爽彩さんがイジメを受けていた事実を認めない学校や旭川市教育委員会に深い不信感を募らせていた。そのときの母親の表情は“怒り”ではなく、すべてに疲れ切って、爽彩さんが亡くなった理由もわからないまま灯が消えかけているような状態だった。

 慎重に取材を進め、約2週間かけて友人、支援者、学校関係者、近隣住人などを当たり、多くの証言と物証を積み重ねた。取材過程から見えてきたものは、凄惨なイジメ事件に関与した加害者すべてが未成年という事実だった。そして、加害生徒が犯した行為が従来のイジメという枠を大きく外れ、SNSによるわいせつ画像の拡散、性犯罪にまで及んでいたことだった。

いじめが行われた旭川市内の公園 ©文藝春秋

加害生徒の態度に驚愕

 事実確認のための加害生徒への取材は、相手が未成年であるということを考慮し、細心の注意を払って行った。少年少女の保護者にアプローチして、保護者同伴、もしくは本人ではなく保護者に爽彩さんへのイジメに対する認識や亡くなったことについて現在の心境を聞いた。