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──宮﨑さんが眞人として、両親と再び出会ったというか…。

鈴木 そうですね、友情物語を語りながら。…でも、もともとは違う展開になるはずでした。

──どうなるはずだったんですか?

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鈴木 重要なキャラクターとして大伯父が出てくるじゃないですか。僕らはすぐわかるんですけど、あれは似顔絵です。高畑勲の顔なんです。

高畑勲の死によって宮崎駿の手は止まった

──大伯父のモデル探しもSNSで話題に上ってましたが、それは疑う余地がないぐらいはっきりしてるんですか?

鈴木 そうです。宮さんはアニメーションの世界に入ってすぐ、高畑勲に出会った。『太陽の王子 ホルスの大冒険』で宮さんを大抜擢して、今の宮﨑駿を作ったと言ってもいい存在です。その大伯父、高畑勲との話が中心になって、サギ男はもう少し軽い存在になったはずです。

鈴木氏が「疑う余地なく高畑勲」と断言する大伯父 ©2023 Studio Ghibli

──どうしてそうならなかったんですか?

鈴木 高畑さんが亡くなったからです(18年4月)。それからしばらくは宮さんの手が止まり、絵コンテの作業を再開しても、大伯父が出てこなくなっちゃったんです。大伯父との関係を描いていくものだと思ってたら、全然出てこなくなったからビックリして。で、最後のほうになったらまた出てきた(笑)。サギ男との物語に気を取られて僕は忘れていたのに、宮さんは忘れてなかったですね(笑)。

今作で高畑勲との話は終わり

──ラストでは、眞人が大伯父の作った世界の継承を持ちかけられます。

鈴木 そう。なのにそれを受け容れないでしょ? 僕はこの物語を裏側から見てしまうから、「これで宮さん、ようやく高畑さんの重石が取れた、身軽になるんだな」と思いましたね。

──『風立ちぬ』と比べて、“最後の作品”感が薄いですし、次作では、描ききれなかった高畑さんとの関係を描くんでしょうか。

鈴木 いや、高畑さんとの話はこれで終わりじゃないかな。本人的にはこの作品で解消したつもりだと思いますよ。

INTRODUCTION
宮﨑駿監督 10 年ぶりとなる長編映画最新作。作品タイトル『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿が少年時代に出会って感動したという吉野源三郎の同名著作から。内容はオリジナルストーリーで、原作・脚本・監督を宮﨑駿が担当した。宣伝なし、ストーリーや声優も明かされないままでの公開にもかかわらず、ロングランヒットを記録する。

STAFF 
原作・脚本・監督:宮﨑駿/プロデューサー:鈴木敏夫/制作:スタジオジブリ、星野康二、宮崎吾朗、中島清文/音楽:久石 譲/主題歌:米津玄師/日本/約124分/配給:東宝