「日本映画を壊してみませんか?」という招待状をもらった気分
主人公の岩森を演じたのは若葉竜也。台本が届いたのはコロナ禍の真っ只中で、エンタメ界のみならず社会全般に抑圧を感じ、破壊衝動のようなものが蓄積していた時期だったという。「そんな中、荒木監督から台本が届きました。読んでみると、その『わけのわからなさ』がすごく魅力的で、『日本映画を壊してみませんか?』という招待状をもらったようでした」とコメント。
復讐を繰り返す中で変化していく岩森の心境をセリフに頼ることなく繊細に表現した若葉は、作品に対する不安や恐れはなかったかという質問に対し、「一切なかった」ときっぱり。
「こういう役がやりたいとか、新しいことにチャレンジしたいというタイプの俳優ではないんです。でも今回は、ある日、虫を殺して遊んでいる小さい子どもを見たときに、人間の本質的なものが見えたような気がして…。そういう、生きていくうえで押さえ込まれた人間という生き物が持つ本来の凶暴性だったり、残虐性だったりが、この映画の中で炙り出されればと思い、そこに注力しました」
また、主人公に復讐される溝口を伊勢谷友介が熱演。幾度も殺し、幾度も殺される中で、2人の男が奇妙な友情で結ばれていくのも見どころの一つだ。初共演となった伊勢谷とは、「肩肘張らず接することができました」と若葉。「撮影中にどんどんコミュニケーションを深めていけたので、結果的にそれが映画に映し出されたのだと思います」と語った。
会見では、ループ6で描かれたボウリングのシーンについての撮影秘話も。岩森の体が勝手に動いてボウルを溝口に投げつけるのだが、「大変だったんだよね、あの撮影」と伊勢谷が振り返ると、「そうなんです!」と若葉。「元々は軽いボールを使って、まるでボールに動かされているかのように演技やパントマイムをしてくれと言われたのですが、やってみてそれは不可能だということがわかりまして…。実際に重たいボールをテグスで引っ張ってもらおうと現場で提案させてもらって、あのシーンが生まれました。CGではないです!」と強調した。