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イギリスBBCの続報「ジャニーズ解体のその後」で東山社長を取材した記者が“失望と苛立ち”を示した理由

「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」#1

2024/04/08
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ジャニー氏以外のスタッフ2人による性加害、積極的には動かない東山社長

 アザー記者は元ジャニーズJr.でジャニー氏による性加害を受けたという二本樹顕理さんに取材し、ジャニー氏以外にも加害者たちがいたことを知る。それをインタビューで東山紀之社長にぶつけると、加害者が2人いた事実を認めたが、自ら警察に情報提供はしないという消極的な姿勢を示した。

BBCの取材に応じた元ジャニーズJr.の二本樹顕理氏 「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」(BBC NEWS JAPANより)

アザー記者 少年を虐待した複数の人間がこの社内にいたと調査で明らかになったら、ただ常識としてその情報は警察に提供する必要がありませんか?

東山社長 法的なことを考えると、僕らには権限がないと思いますので、当事者の人たちが刑事告訴したら、僕らとしては全面的に協力する。

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アザー記者 道義上、(警察に情報を提供するのが)正しいことではないですか。

東山社長 実際、僕も答えがわからないですね。どこの着地点が果たして正しいのか。被害に遭った人たちがどういうことを望んでいるのか……。

 もっともらしい返答である。だがアザー記者が続けて質問した。

「被害に遭ったサバイバーの人たちに刑事事件としての立件を望むか、質問していますか?」

 すると東山社長は、「いや、どなたなのかを理解していないです」と答えた。

東山紀之氏 ©時事通信社

 会社トップとして組織内で絶対的な権力を握っていたジャニー喜多川氏が少年たちに対して日常的に性虐待を行っていたのであれば、部下が「自分たちも(少年たちに対して)同じことしても構わない」と考えることは起こりうる。トップの行為を知っていた社員が同様の行為をしていたとしたら、それは「モラルハザード(倫理観の欠如)」という組織の問題である。当然ながら会社のトップならば徹底的に究明する義務だとするのが当然と考える。

 旧ジャニーズ事務所の性加害では、主な加害者であるジャニー氏はすでに亡くなっている。だが、社員として加害をした人物が存命ならば、警察に情報提供などを行うことは可能だといえる。それなのに東山社長は後ろ向きだった。旧ジャニーズ事務所を引き継いだ会社トップとして疑問が残った。

 BBCの続報の後、日本のメディア各社がSMILE-UP.社に問い合わせ、加害者2名のうち1人は東山社長の元マネージャーだと判明した(すでに退社)。新聞もテレビもBBCによる東山社長インタビューを引用し、旧ジャニーズ事務所の性加害問題が久しぶりに報道された。

 東山氏の元マネージャーらによる性加害はどのくらいの期間、いったい何人の未成年に対して行われていたのか。犯罪ともいえる案件であるにもかかわらず、事務所は自ら詳細について発表しようとせず、メディアも追及しようとしないため、真相は今も闇に葬られたままだ。

イギリスBBCの続報「ジャニーズ解体のその後」で東山社長を取材した記者が“失望と苛立ち”を示した理由

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