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アザー記者が注目したのは、他にも「加害者」がいたこと

 昨年3月にBBCが放送して一連の報道のきっかけになったドキュメンタリー「J-POPの捕食者」。取材したアザー記者がジャニー喜多川氏による性加害にあった元ジャニーズJr.らにインタビューしているが、彼らが加害者であるジャニー氏をけっして悪く言おうとしないことから、アザー記者は、子どもの頃に性加害を受けた被害者がその事実を正当化してしまう「グルーミング」の影響下にあることを指摘した。 

「グルーミング」とは、もともとは動物が仲間の毛をなめてつくろう「毛づくろい」を意味し、そこから派生して子どもに対する性虐待や性犯罪の文脈でも使われる専門用語だ。子どもたちを大人が手なずけることを意味する。

メリー喜多川氏

 精神的な支配関係がある時に、子どもは大人からの性的な虐待要求に従順になりやすい。子どもに対する性暴力、性虐待、性犯罪などを理解しようとする時、「グルーミング」について、よく理解しておく必要がある。
 
 昨年はメディアの前で頻繁に発言した「ジャニーズ性加害問題当事者の会」代表だった平本淳也氏も「J-POPの捕食者」に登場していた。ジャニー氏の合宿所での行為などについて証言しつつも、自身については「僕、被害にも何にもあっていない。ただマッサージをされたレベルのほんの少しの延長」などとコメントをした。アザー記者は平本氏自身が「加害者への尊敬の念」を持ち、「グルーミング」の影響だと解説した。平本氏は昨年、様々なメディアへ登場した際、傷の深さについても発言してきた。健康状態の悪化を理由に、今年に入って代表を辞任している。

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看板が撤去される前の旧ジャニーズ事務所 ©AFLO

 アザー記者は性的搾取や性的虐待について専門的に取材してきたジャーナリストとして、特に被害者側の心の傷を重視して追加取材している。注目したのが旧ジャニーズ事務所で経営トップのジャニー氏だけでなく、他にも「加害者」がいたことだ。