東山紀之氏が今年2月、BBCによる単独インタビューに応じ、その内容を中心に「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」がBBCニュースで日本時間3月30日に放送された。昨年のBBC番組「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」で取材に当たったモビーン・アザー記者らは、再び日本を訪れ、この1年で何が変わり、何が変わらなかったのかを取材。番組を見ると、日本のメディアとの違いが浮かび上がってきた。(執筆:ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明氏)
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なぜ日本のメディアはBBCの後追いばかり?
BBCの続報の後、日本のメディア各社がSMILE-UP.社に問い合わせ、加害者2名のうち1人は東山社長の元マネージャーだと判明した。新聞もテレビもBBCによる東山社長インタビューを引用し、旧ジャニーズ事務所の性加害問題が久しぶりに報道された。
ジャニー氏以外の加害者の存在をBBCに証言した二本樹顕理さんは昨年TBSや日テレ、NHKなど各メディアに登場した人だ。それなのに、なぜこれまで今回報じられた加害者の詳細については焦点が当たらなかったのか。それはテレビや新聞を中心とする日本の報道関係者がこの問題を積極的に報道しなかったためだろう。
これは日本のメディアの弱点だ。BBCなど他の報道機関が焦点を当てなければ、それが報道すべきことと考えない。昨年、各社が猛反省した「メディアの沈黙」。それが現在も続いている実態が露呈した。
自殺した男性のケースでの無責任な事務所の対応
今回、BBCは昨年10月に自殺した元ジャニーズJr.の男性の妻にインタビューした。
男性はジャニー氏による性加害を告発する流れを止めないようにと自身も、実名・顔出しで告発した。ところがSNSで誹謗中傷が寄せられるようになる。