1ページ目から読む
2/3ページ目

 追い打ちをかけたのが昨年秋、旧ジャニーズ事務所から社名変更したSMILE-UP.が「被害者でない可能性が高い方々が、本当の被害者の方々の証言を使って虚偽の話をされているケースが複数あるという情報にも接している」という趣旨の文章をホームページに載せたことだった。直後から「詐欺師だ」「金がほしいんだろう」などと誹謗中傷が増えていったという。

 妻によると男性は個人情報が暴露されて妻や子どもの顔写真がさらされたり、殺害予告が届いたりという事態で次第に精神的に追いつめられていったという。

誹謗中傷を助長した事務所の責任

東山氏はタレント業を引退した ©文藝春秋

 SMILE-UP.の東山社長はBBCのインタビューで、被害者を中傷し、うそつき呼ばわりする人々に向けて発信しないのか問われて、消極姿勢を示した。

ADVERTISEMENT

「言論の自由もあると思うんですね。僕は別に誹謗中傷を推奨しているわけでもなく、その人にとってはそれが正義の意見なんだろうなと思う時もあります」

「取材のプロセス」を明かす報道手法

 アザー記者は、SMILE-UP.への取材の過程で、カメラなしでの事前調整を求められ、担当者の名前さえ知らされなかったことを明かした。広報の担当者たちは3人の被害者を別の観点から取材するように勧め、被害者を装う者が多数いるという話をしたという。

 アザー記者は「おかしなことではないか」と疑問を投げた。日本の歴史上、最悪の性的虐待事件の取材をする自分たちに対して、その方向を誘導するかのような態度。

アザー氏は東山社長にサバイバーへの補償やオンラインでの誹謗中傷など、多岐にわたる質問をした 「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」(BBC NEWS JAPANより)

 確かにこれは一種の“論点ずらし”だ。アザー記者は東山社長に質問した。

アザー記者 広報の人たちは私たちに虐待のサバイバーに会ってもらいたいと言い、そういう場が設けられました。その場にいたサバイバーたちは、いま名乗り出て被害を主張する多くの人が真実を話していないと思うと、そういう考えを私たちに伝えてきました。このやり取りにはどういう目的があったのか、理解したいのですが。

東山社長 幅広く話を聞いてもらった方がいいんじゃないかなと。さまざまな意見をモビーンさんに聞いてもらった方がさらに視野が広がり取材もしやすいのかなと。