来年70周年を迎えるヒカリ座。1990年代には『タイタニック』や『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』などヒットが続き、大行列が劇場を囲んだこともある。

 だが三井覚さんが支配人に就任した2003年は、冬の時代に。宇都宮に大手シネコンが進出したことで、既存館が次々と閉館に追い込まれた。

©熊崎敬

「単館系が根づくには10年かかる」といわれるなかで

 就任から10年ほど耐える経営が続いたが、デジタル上映への移行を機に三井さんは大胆な方針転換に打って出る。

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「上映作品をメジャー系から単館系に切り替えたんです。業界では単館系が根づくには10年かかるといわれていて、そんな余裕はなかったですが思い切って舵を切りました。

支配人の三井さん ©熊崎敬

 メジャー系と単館系を両立したところで中途半端。いいとこ取りをしても、却っておかしなことになるだけですから」

 この決断は吉と出る。6年目あたりから、新機軸が軌道に乗ってきたのだ。

 独自の色を出したことで、多くのファンが劇場を応援してくれるようになった。

キャバレーを改築して造られた5階のスクリーン ©熊崎敬

 劇場の隣にあるコミュニティFMでは、7年前から若い世代の映画ファンによる『We are Movie Lovers.』という1時間番組が始まり、地元の映画好きサークルとのコラボ上映も行なわれている。