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撮影では皆さん、セリフをすべて入れて互いの呼吸に合わせて演じてくださったんで、すごく感動しました。リハーサルは、お互いの関係性がはっきり掴めるようになるまで繰り返しました。撮影中、俳優さん側から手を抜くなよという感じが伝わってくるのも励みになりましたね。
関係性で言えば、当初は辰巳と葵がキスをする場面を用意してたんです。だけど、撮影が進むにつれて、『これはなくていいな』と思ってカットしました。恋愛には向かわない乾いた感じが最後まで持続したのは、遠藤さんと森田さんの絶妙な掛け合いのお陰です。
アクションに関しては、銃って日本社会では異物でしょう? だから出てくると一気に嘘臭くなる。それが怖かったですね。
倉本さんと遠藤さんが対決する場面。車の下でライフルを構える森田さんがいるんですが、あそこにリアリティを持たせられるかは賭けでしたね。あからさまに銃を構える彼女を見せないでおいた方がいいんじゃないかと、編集のギリギリまで悩みました」
舞台やドラマ演出、学校講師での資金作りも「苦にならなかった」
こうして出来た力編が世に出るまでには数年がかかった。手弁当での試写、そこから配給を見つけるという道はどうだったのか?
「キャスト・スタッフが一枚岩でやりたいことをやろうと望んで撮った映画ですから、自前で試写を回すのは何の辛さもなかったです。観てくれた方に意見をもらい、配給は一番作品にマッチしたインターフィルムさんに繋がっていきました。
倉本さんの舞台やテレビドラマの演出、学校の講師をして資金を作っていましたけど、それも苦になりませんでした。やっぱりビジネスと違うドライブ感が制作から配給まで続いてくれたお陰です」