また、その時に聞いた話が、あまりにも衝撃だった。
「先生が前に関わっていた障がい者のお子さんの話を聞いたんです。何気なく、週末は何してるの? とその子に聞くと『いれている』と答えたそうで。その答えを不思議に思い、深く聞いたところ、その子の性処理を、実のお母さまが行っていることが分かり。お母さんは、妊娠した息子の子どもを堕ろしたこともあると。先生がお母さんに話を聞きに行くと『自分がどうにかしないと、子どもが性犯罪者になってしまいそうだったから』と涙ながらに話されたそうで……、もうあまりにショックでした。そんなこと、絶対にあってはならない。何で、お母さんだけが頑張らないといけないの、と」
その母親たちに小西さんは、かつての自分の苦しみを重ね合わせた。
「祖母を介護していた時、自分ひとりでどうにかしなければならないと思い込み、状況から逃れることができないところまで自分を追い込んでしまった。このお母さんも悩みを自分ひとりで抱え込み、その結果、望まない役割までも引き受けてしまったのだと。それが、介護していた自分の状況と重なって、どうか一人で頑張らないでください。私でよければ、お子さんの性について考えさせてくださいという思いで立ち上げました。今も日本のどこかで一人悩んでいるお母さんが私を見つけてくださるには、ちゃんとした看板が必要だと思ったんです」
「輝き」という名には、「障がい者はもちろん、家族や支援者の人生も輝けるものでありますように」という願いを込めた。
射精がすべてではない
立ち上げて約3年半経った今。問い合わせは月に80件ほど。身体、知的、精神、発達とさまざまな障がいの方から寄せられる。
具体的な性サービスは、ひとりひとり違う。
「当たり前ですが、一人一人、育ってきた環境も価値観も違うので、望んでいることも困っていることも違う。この障がいの方はこういうことを望みがち、とは言えないのです。身体的に射精が難しい方もいて、射精がすべてではありません。そのため、お問い合わせをいただいたら、必ず1時間、対面かオンラインで一度、どのような障がいがあるのか、ご本人が何を望んでいるのかなど、しっかりとお話をうかがう時間を設けています」