「1月に3度増刷して勢いがつき、2月に入ってからは万単位の増刷を繰り返しました。刷れば刷るほど売れていく感覚は営業歴20年以上の私でもレアな経験です」。
検索しなくても何の本か皆わかる
書店を訪れる読者の反応はどうだったのだろうか。
「本が置いてあってよかった、と喜ぶお客さんが多かったです。特に60歳以上の女性が多く、ここまで元気で生きられたらいいわ、と言って買ってくださったり。中国新聞の記事や広告の切り抜きを持って店員に尋ねる方も多くいらっしゃいました」(藤井氏)
紀伊國屋書店広島店ではどこでも目につくように飾りつけをしたという。
「メインの通路側に多面で目立つように置いたり、レジ前にも置きました。当店は百貨店内の立地で出入り口が多いですので、お客様がどこから入っても気がつくように何か所にも置いたのです」(同前)
1月28日早朝にはRCC(中国放送)で特別番組が放映された。「朝からお客さんが問い合わせてきましたが、ウチにはもう本がない状態でした」(三島店長)。
2月に入ると、新聞広告効果も相まって広島県以外の書店でも売上が大きく伸び、“哲代おばあちゃん”ブームは広島から全国へと波及していった。
「お客さんから“石井おばあちゃん”、“哲代おばあちゃん”、“102歳”、“尾道の”というキーワードが出たら検索しなくても何の本か店員は皆わかるようになりました」(藤井氏)
年間売上総合1位がなんと『102歳、一人暮らし。』
ベストセラーになった背景を啓文社の三島さんはこう語る。
「佐藤愛子さんや曽野綾子さんなど、元気な高齢者の書いた本が近年ブームになっていましたが、広島県では“哲代おばあちゃん”が別格でしたね」
そして啓文社では2023年の年間売上総合1位がなんと『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』になった。「年間売上総合2位は東野圭吾さんの文庫本です。“哲代おばあちゃん”の本はあの東野さんの文庫の2倍以上売れたのです」(三島店長)
“哲代おばあちゃん”のキャラクターは書店員にも好評だ。
「ふくふくとした笑顔にあやかりたいですね。いつまでも幸せでいらしてほしいです」(藤井氏)
「“哲代おばあちゃん”は愛嬌があってかわいらしい。もはや尾道では知らない人はいない状態になりましたね。3月に刊行された第2弾『103歳、名言だらけ。なーんちゃって』の先も第3弾、第4弾と出してほしいです」(三島店長)
健康長寿を地で行く“100歳本ブーム”はまだまだ続く。