遺伝子の及ぼす影響はどれくらいあるか。心理学者で遺伝学研究者のダニエル・ディック博士は「一般的に、子どもは(実の)親に似るものだが、子どもはすべて遺伝子の賽(さい)の目次第なので、どんな子になるかは全くわからない。頭のいい両親から平凡な知能の子どもが、外向的な両親から内向的な子どもが生まれることもある。私は『○○の遺伝子』というフレーズが大嫌いだが、メディアはこれが大好きで、アルコール使用障害の遺伝子、うつ病の遺伝子とするが、真実はもっと複雑だ」という――。
※本稿は、ダニエル・ディック(著)、竹内薫(監訳)『THE CHILD CODE 「遺伝が9割」そして、親にできること わが子の「特性」を見抜いて、伸ばす』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
「子どもの行動」に遺伝子が与えている影響
遺伝子は、子どもがどれだけ口答えをするか、どれだけまじめに言いつけに従うか、どれだけ読書が好きか、どれだけ泣き虫か、さらには、サンタが家にやってくると聞いてどれだけパニックになるか、などといったことに影響を与えます。
本当なんですよ。私には6歳の姪(めい)がいますが、この子は家に誰かが入ってくることに恐怖を感じる子で、毎年クリスマスの夜には、「サンタさん、2階には上がってこないでね」というメモを家族で書くのです(もう一人の子どものことも考えた末、母親である私の妹が説得してたどりついた妥協案です)。
遺伝子は子どもの行動に大きく影響します。とはいえ、現実的にはその仕組みはどうなっているのでしょうか。
『なぜシマウマは胃潰瘍にならないか』(栗田昌裕・監修/森平慶司・訳、シュプリンガー・フェアラーク東京刊)などの著書で知られる研究者でベストセラー作家でもあるロバート・サポルスキーの「無の遺伝子」という論文が私は大好きです。
私は遺伝学の研究者ですが、サポルスキーがこの論文で述べたように、「○○の遺伝子」というフレーズが大嫌いです。