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 乗車するお客にドライバーが「金を持っているか」と確認するのは、お客を疑うことになり、タブーでもある。

 しかし、そのお客は「今は手持ちの金がない」と正直に言っているのだ。あとは、家についてカードで払うという言葉を信じるかどうか、だ。

普通のタクシードライバーなら断る理由

 私なら……間違いなく、断る。

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 理由その一、あまりにも遠くて、体力に自信がない。

 理由その二、料金をもらえない可能性がある。なんらかの理由をつけられて逃げられたら、富山ではどうにも手の打ちようもないだろう。

 理由その三、ちょっと情けないが、そんな無理をしてまで営収にこだわらない。

 そのお客には、「とてもありがたいお話ですが、ご覧のような年輩者で体力が持ちません。それだけの遠距離で、もし私の身に何か起こったら、お客さまに取り返しのつかないことになりますので、申し訳ございませんが、ほかのクルマを当たってください」と答えるだろう。正真正銘、これが本音だ。

 しかし、遠山さんはこの話を受けた。