『愛と呪い』(新潮社)、『ふつうのおんなのこにもどりたい』(徳間書店)などを手がける漫画家・ふみふみこさんが、「幼少期の性被害」をテーマにしたフィクション作品『棲くう鬼』を描いた。

 

未成年の男子が受けた性被害

 この作品からは、未成年の男子が受けた性被害について、歳月を経て訴える意義やその困難さを読者に問いかけるようなメッセージが伝わってくる。こうした性被害は「旧ジャニーズ性加害問題」を発端に広く認識されはじめ、昨年には、子どもが受けた性被害については18歳まで事実上時効が適用されないなどの法改正が行われている。

『棲くう鬼』より

「旧ジャニーズ性加害問題」で日本社会の巨大な「山」を動かしたのは、カウアン・オカモト氏による実名・顔出しでの告発だった。オカモト氏は故・ジャニー喜多川氏による性加害を告発した動機について、著書『ユー。ジャニーズの性加害を告発して』でこう綴っている。

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闇の部分には目をつぶってきた

〈ジャニーさんの性加害など、闇の部分には目をつぶってきた。自分の過去を隠したまま生きてきた。

 実際にはそんなに上手くいくわけがなかった。ジャニーズ事務所を辞めて、音楽で世界を目指そうとした。でも結局は生きていくため、その場しのぎのビジネスをやらざるを得なくなった。次々と仲間も離れていった。

 みんなに認めてもらいたいとか、恩返しをしたいとか、傲慢でしかなかった。それが最大の間違いだった。自分としては考えに考えてやっていたつもりだけど、このままだったら30歳になっても、何歳になっても失敗し続ける。

 だから、これからは、もっとシンプルに考えることにしよう。

 そう思ったとき、真っ先に頭の中に浮かんだのは、

「もう自分に嘘をつきたくない」

 という思いだった。〉

『棲くう鬼』より

じっと息をひそめて耐えている見えない被害者

 ふみふみこさんは『棲くう鬼』の公開にあたり、「性被害は特に、声をあげられず、じっと息をひそめて耐えている見えない被害者が多いように感じます。加害者にも事情があるから、相互利益があるから、被害者に隙があったから…いろんな言い訳があります。でも悪いのはただ、加害者だという思いで、この漫画をかきました」とコメントを寄せている。